放課後に隼人と山崎沙耶香のキスを目撃した翌週の火曜日、麻衣子は沙耶香に呼び出しを受けた。
沙耶香に放課後の裏庭に連れて行かれる。沙耶香とはここに来るまで一言も喋らなかった。

「あの……話ってなに?」
「加藤さんて、隼人の幼なじみなんだよね?」
「そうだけど……」

 マスカラとアイラインで目元を黒く縁取った沙耶香が麻衣子を睨み付けている。

 沙耶香の髪色は少し茶色っぽい。地毛ではなさそうで染めているみたいだ。
スカートも規定の長さより短い。学校にメイクをして来るのも髪を染めるのも、スカート丈も、すべてが校則違反だ。

隼人の好みはこういう派手めな外見の女の子だ。隼人の周りにいる女の子達はみんな沙耶香のような外見をしていた。

「隼人と小学校が同じだった子に聞いたの。加藤さんと隼人、小学生の時はいつも一緒にいたんだって?」
「えっと……それがなに?」
「隼人が好きなの?」

 麻衣子の質問に沙耶香は質問で返してきた。それも爆弾を伴って。
麻衣子はパンダに似た沙耶香の目を真っ正面から見据える。

「それを聞いてどうするの? 隼人の彼女は山崎さんなんだからそれでいいじゃない」
「よくない!」

冷静な物言いの麻衣子とは違い、沙耶香は声を荒くした。

「知ってる? 隼人ってね、いっつもあんたのこと気にしてるの。廊下ですれ違ったり隼人が私のクラスに来た時もいつもあんたのこと目で追ってるんだよ! これってどういうこと?」

沙耶香に詰め寄られて麻衣子はたじろいだ。隼人の行動の意味は隼人にしかわからない。そんなことを聞かれても困る。

(どういうことってそんなこと私に聞かれても……隼人に聞いてよ……)