冷たい北風が頬に触れる日曜日の午後。実家の両親に用事があった私は久しぶりに故郷に帰って来た。

 懐かしい思い出の詰まった街をぶらぶらと歩く。今日の空は青く澄んでいて、いちょう並木の下にはいちょうの葉で出来た黄色い絨毯。
子どもの頃はこの黄色い絨毯の上を無邪気に走り回っていた。

 昔と変わらない風景、歩き慣れた道。この場所もこの風景もよく知っている。
変わらないもの、変わったもの、変わろうとしているもの。街も人も移ろいゆく。

 そっとお腹に左手を添える。もしかしたらこれこそが日々変わっていくものの象徴なのかもしれない。
様々な想いを巡らせて歩いていた時だった。

『結恵《ゆえ》!』

 後ろから名前を呼ばれた気がして振り向いた先には懐かしい顔のあの人がいた。心臓が高鳴って昔の記憶が甦る。

 ひらひら、ひらひら。私と彼の間を通って、いちょうの黄色い葉が舞い落ちた。