沢井あかりとの電話を終えた隼人は訪れた空虚と脱力感をもて余してベッドに横になった。

(俺の知る沢井あかりは偽りだったのか?)

馬鹿正直で少し天然が入る可愛い後輩だった沢井あかりはもういない。
予想はついていたがこれではっきりした。
あかりは嘘をついている。その嘘を必至で隠そうとしていることも、間宮誠治が死んで喜んでいることも……。

 隼人は西日で赤く染まる天井を見つめた。

(亮への気持ちは嘘じゃなかったよな? 美月ちゃんが妹みたいだって言ってたあの沢井が本当のアイツだと……そう思わせてくれ)

確かめるべきじゃなかった。こんなにやりきれない気持ちになるのなら、あやふやなまま、勘違いで終わらせてしまう方が楽だった。

 無意識に力を入れて握り締めていた携帯電話に新着メールが入る。美月からのメールの返信だった。

美月はあかりがアメリカに帰ると知っているのか……わからない。あえて美月にそれを確かめる必要もない。
美月にも渡辺にも、あかりのことは言えない。

 敬愛するシャーロック・ホームズの台詞が浮かぶ。
 ──“不可能を消去して最後に残ったものが如何に奇妙なことであってもそれが真実となる”──

『最後に残ったものが真実……』

ならばこの気持ちが真実だと言うのか?

最後に残ったもの?
それは消えない疑惑と消せない思い出。