どう答えればいいか戸惑っていた時、リフティングを終えた隼人が駆け寄って来た。
『先生、年甲斐もなく女の子口説いて何やってるんですか』
『はっはっ! この綺麗なお嬢さんと話をしたくてね』
『はー。しょうがないですね。美月ちゃん、こっち来て』
筒井教諭に呆れた笑いを返した隼人が美月を手招きする。
「なんですか?」
『いいから。行くよ』
美月の腕を掴んだ隼人は彼女をグラウンドの中央に連れていく。
訳もわからず芝生のグラウンドに立たされた美月は隼人とサッカー部の部員に囲まれた。
隼人が美月に差し出した物はサッカーボール。
『思い切り蹴飛ばしてみろよ。嫌なこと吹き飛ばす勢いで蹴ってみれば、少しはスッキリするかもよ』
「嫌なこと……吹き飛ばす?」
『そう。なんなら叫びながら蹴ってもいいぜ。あそこに向けてシュート決めてみろよ』
目の前にはゴールキーパー不在のゴールのネットがある。
「……本当に叫んでいいんですか?」
『どうぞどうぞ。おーい、お前ら。今からこの子がでっかい声出すから耳塞いでおけよー』
隼人の指示を素直に聞く中学生達は部員もマネージャーも首を傾げつつ両耳を手で塞いだ。ただひとり、隼人を除いては。
「木村さんは耳塞がないの?」
『俺はこのまま。何叫ぶか興味あるしな』
「じゃあ……行きますよ? 本当に叫んじゃいますよ?」
『どうぞ』
隼人は美月のいる地点から一歩下がった。美月は思い切り息を吸い、足元のボールを蹴ると同時に息を吐いて叫んだ。
「勝手にいなくならないでよ! 嘘つき!」
美月が蹴飛ばしたボールは見事にゴールの中央にシュートを決めた。ハァ、とまた息を吐いて空を見上げる美月に隼人が拍手を送る。
『なるほどね』
「木村さんなら意味わかるでしょ?」
『……ああ』
ゴールネットの中では美月が蹴ったボールが転がっている。そのボールに込められた想いがわかる人間はこの場では隼人だけだ。
「でも少しすっきりしたかも」
『それは良かった』
美月に向けて微笑む隼人の顔は安堵と優しさに満ちていた。
『先生、年甲斐もなく女の子口説いて何やってるんですか』
『はっはっ! この綺麗なお嬢さんと話をしたくてね』
『はー。しょうがないですね。美月ちゃん、こっち来て』
筒井教諭に呆れた笑いを返した隼人が美月を手招きする。
「なんですか?」
『いいから。行くよ』
美月の腕を掴んだ隼人は彼女をグラウンドの中央に連れていく。
訳もわからず芝生のグラウンドに立たされた美月は隼人とサッカー部の部員に囲まれた。
隼人が美月に差し出した物はサッカーボール。
『思い切り蹴飛ばしてみろよ。嫌なこと吹き飛ばす勢いで蹴ってみれば、少しはスッキリするかもよ』
「嫌なこと……吹き飛ばす?」
『そう。なんなら叫びながら蹴ってもいいぜ。あそこに向けてシュート決めてみろよ』
目の前にはゴールキーパー不在のゴールのネットがある。
「……本当に叫んでいいんですか?」
『どうぞどうぞ。おーい、お前ら。今からこの子がでっかい声出すから耳塞いでおけよー』
隼人の指示を素直に聞く中学生達は部員もマネージャーも首を傾げつつ両耳を手で塞いだ。ただひとり、隼人を除いては。
「木村さんは耳塞がないの?」
『俺はこのまま。何叫ぶか興味あるしな』
「じゃあ……行きますよ? 本当に叫んじゃいますよ?」
『どうぞ』
隼人は美月のいる地点から一歩下がった。美月は思い切り息を吸い、足元のボールを蹴ると同時に息を吐いて叫んだ。
「勝手にいなくならないでよ! 嘘つき!」
美月が蹴飛ばしたボールは見事にゴールの中央にシュートを決めた。ハァ、とまた息を吐いて空を見上げる美月に隼人が拍手を送る。
『なるほどね』
「木村さんなら意味わかるでしょ?」
『……ああ』
ゴールネットの中では美月が蹴ったボールが転がっている。そのボールに込められた想いがわかる人間はこの場では隼人だけだ。
「でも少しすっきりしたかも」
『それは良かった』
美月に向けて微笑む隼人の顔は安堵と優しさに満ちていた。