拝啓 佐藤先生へ


 
 私にとって2枚目の遺書となります。
 1枚目は【まだ見ぬ『誰か』様】向けて、高校入学時に書きました。

 ですが今回は、佐藤先生に向けて書きます。


 渡邊先生に『高校を卒業できる確率は10%未満』と言われて望んだ入学式。
 どうせ死ぬのならば、同級生とは関わらない。そう決めて過ごしていました。

 ひとりぼっちの日々を過ごす中。
 今でも思い出す、佐藤先生の言葉。

 「森野未来、奇跡の足だ」

 先生自身は、覚えていますか。
 私はこの言葉を言われた時、非常に苛立ちを覚えたものです。
 馬鹿にされたと思いました。

 昔からそうでした。
 運動ができない私のことを同級生、体育教師、色んな人が馬鹿にしてきました。
 だから、佐藤先生も同じなんだと率直に思いました。

 でも、違いました。
 佐藤先生はその後、運動が苦手な私を褒めてくれました。

 腹筋2回でも、ボール投げがそこそこでも。先生は褒めてくれました。


 それが私は、物凄く嬉しかったです。


 そして佐藤先生が私を気に掛け、話し掛けてくれたこと。
 本当に、本当に嬉しかったです。

 同級生と関わらないと言いながらも、本当は寂しかったが故の感情だったと、今なら思います。

 いつも私の傍に居てくれて、支えてくれて。
 ありがとうございました。


 これから行く先が、どのような場所なのか分かりません。
 ですが佐藤先生と一緒なら、例えそこがどんな場所でも怖くないと思うのです。
 

 佐藤先生。
 これまでも、これからも。ずっと先生のことが大好きです。




 願わくは、“記憶能力欠乏症”と戦った先でも。


 沢山の花と共に。
 いつまでも、佐藤先生の隣で。




敬具


森野 未来


 








花と共に、あなたの隣で。  終