サァッと青ざめた乃花(のか)は、商品だなに左手を当てながら歩き始める。

(誰か、人を探そう!そうすればきっと、お母さんとも合流できるはず…!)




「お母さん…」




 真っ暗でなにも見えなくても、乃花(のか)はキョロキョロと顔を動かしながら、小さな声で呼びかけた。

 そんな乃花(のか)の声を打ち消すように、遠くから「ママー!」と先ほどの女の子が呼びかける声が聞こえる。

 少なくとも、自分1人ではないと分かるその声に、乃花(のか)はホッと息を吐きつつも、右手を胸の前でにぎりこんだ。


(あの子と私以外、誰もいないのかな…?本当に神隠しにあっちゃったの…?)

 ゾワゾワと、幽霊(ゆうれい)の手に背中をなでられているように感じた乃花(のか)は、前に出す足を速める。

 そのとき、カンッと足元から木製のなにかにぶつかったような音がした。 実際、乃花(のか)のつま先にもなにか硬いものが当たった感触がする。