よそ見をした一瞬のすきに消えてしまったことさえ、薄気味悪い。

 乃花(のか)は二の腕をこするようにして、あたりにゆっくりと視線をめぐらせた。


 そのとき、チカッ、チカッ、とスーパーの明かりが点滅(てんめつ)して、フッ…と周囲が暗闇に包まれる。




「えっ?」




 乃花(のか)は頭を左右に動かして、明かりが一切見えなくなってしまったことを不本意に知った。

(うそ…停電?)

 とっさに手を伸ばした先に、母がいたはずなのに…乃花(のか)の手は、スカッと、空を切る。




「お母さん?お母さん!」




 母が近くにいれば、間違いなく「乃花(のか)、こっちよ」と返事が聞こえるはずだ。

 けれど、乃花(のか)の声の他に聞こえたのは、乃花(のか)と同じように母を呼ぶ、女の子の声だった。




「ママー?どこー!?」




 遠くのほうから聞こえた声に意識を向けた乃花(のか)は、店内がシーンと静まり返っていることに気づいて、ゴクリとつばを飲む。

 遠くの女の子に答える母親の声すら、聞こえない。

(…神、隠し…)


 乃花(のか)の頭には、母から聞いたばかりの言葉が浮かんだ。