乃花が一歩前に出て、思わず母へ向かって呼びかけたとき――。
乃花の体は、ふわりと浮いた。
「えっ…?」
『かえっちゃ だめ』
すぐうしろから聞こえた高い声に、乃花は身を硬くする。
乃花がいるほうに顔を向けた3人は、乃花のわきの下に手を差し込んだ、ピカピカうさぎの姿を目撃した。
「土谷!」
「乃花ちゃん!」
「お姉ちゃん…っ!」
「い、いやっ…助けて…っ!」
乃花は大つぶの涙を浮かべて、力の抜けた手からカランッと懐中電灯を落とす。
バタ、バタバタ、とゆっくり動かし始めた足はなんの抵抗にもならない。
『いっしょに あそぼう』
「永亜くんっ、來璃をお願い!」
「あぁ!」