うさぎの着ぐるみと目が合って肩をビクリとゆらした乃花(のか)は、ふるえた声で母に聞く。

 乃花(のか)の視線の先をたどるように振り向いた母は、うさぎの着ぐるみがいるほうを見て首をかしげた。




「なにって、なんのこと?」


「えっ?あ、あのうさぎだよ…っ!」




 母の目には、あのうさぎの着ぐるみがふつうの存在として見えるのだろうか。

 そんなおどろきを顔に浮かべたように、乃花(のか)は一度母の顔を見てから、うさぎの着ぐるみを指さそうとした。


 しかし。




「あ、あれ…?」


「うさぎ?そんなのいないじゃない」


「で、でもさっきそこに…」




 乃花(のか)は、パチパチとまばたきをしながらうさぎの着ぐるみが“いた”場所を見つめる。

(一瞬で消えちゃった…なんだったんだろう?)

 かわいいうさぎならまだしも、乃花(のか)が目にしたのは不気味で変わったうさぎの着ぐるみ。