「土谷。怖くても、今は勇気を出すときだ。そこから出なきゃ、いつまで経っても元の世界に帰れないぞ」
「せ、瀬戸川、くん…」
「乃花ちゃん…大丈夫だよ。みんな、一緒にいる。1人を置いて行ったりしないから」
「那成さん…」
「お姉ちゃん…いっしょに、帰ろ?」
「來璃ちゃん…う、ん」
乃花は小さくうなずいて、永亜の手をにぎる。
そして、ギュッと目をつぶりながら、手を引かれるままに一歩、足を前に出した。
(帰る…元の世界に、帰るんだ…っ!)
決意を胸に秘めた乃花は、永亜の手が離れていくと、懐中電灯を両手でにぎりこんで前を見る。
「こっちだ」