「やぁね、乃花(のか)が一緒に来たいって言ったんじゃない。ほら、欲しいお菓子買ってあげるから、早くえらびなさい?」




 母にせっつかれた乃花(のか)は、「うぅ」と今にも泣きそうな声を出しながら、商品だなに視線を戻した。

(早くお菓子をえらんで、すぐ帰ろう…!)

 お菓子をえらび終わったら、今度は乃花(のか)が母をせっつく番だ。


 結局、最初に気になったチョコレートを母のカゴへ入れた乃花(のか)は、そのまま視線を上げて、母のうしろ、ずっと奥に変な着ぐるみがいることに気づいた。

 色あせたピンク色のうさぎ、という見た目はまだふつうなほうで、体に小さな豆電球と電線、いわゆる電飾(でんしょく)を巻きつけているのが特徴(とくちょう)と言える。

 その上、白目が大きく、黒目が小さいために、目を見開いているように見えるのが、なんとも不気味なのだ。




「お、お母さん、あれなに…?」


「え?」