「ほら、來璃(らる)、オレンジジュースだよ。…乃花(のか)ちゃんはなにジュースが好き?りんごとか、ぶどうとかあるけど」


「あ、えっと…ぶどうジュースです」


「ぶどうだね。はい」




 段ボールから取り出されたぶどうジュースを受け取った乃花(のか)は、自身の手がふるえていることに気づいた。

 來璃(らる)に渡したペットボトルのふたを開けてあげた那成(ななる)は、乃花(のか)の様子に気づくと、ふるえている両手を包みこむ。




「…怖いよね。大丈夫、ここにいるかぎりは安全だから」


「あ…那成(ななる)、さん…」


「安心して。僕が一緒にいる」




 温かい那成(ななる)の手に包まれ、やさしく笑いかけられた乃花(のか)は、じわりと込み上げてきた涙をほおにこぼした。

 那成(ななる)は少し目を丸くして、やさしく眉を下げながら、そっと乃花(のか)の頭をなでる。

 そんな2人の様子を見た來璃(らる)は、ゴク、とオレンジジュースを飲んだあとに、口を開いた。