(そんな…それじゃあ私たちは、元の世界に帰れないの?)

 乃花(のか)の目に、じわりと涙が浮かぶ。

(お母さん…やだよ、こんな怖いところにずっといるなんて…私もいつか、人形にされちゃうの…っ!?)


 人形になった蕗咲(ろさ)を思い返して、乃花(のか)はなにも言えずにいた。
 
 しかし。




「なぁ。入り口から外に出たらどうなるんだ?」




 永亜(とあ)は、こんな状況でも取り乱すことなく、那成(ななる)に聞く。

 問われた那成(ななる)は顔を上げて、「分からない」と答えた。




「スーパーの中はあいつが歩き回ってて危ないから…前は、どこかに大人がいないか、みんなで探してたんだけど…」




 うつむいてなにも言わなくなった那成(ななる)を見て、乃花(のか)はヒュッと息を飲む。

(みんな…人形になっちゃったんだ…!)

 永亜(とあ)は考えるように視線を落として、那成(ななる)に手を差し出した。