「…目の前で人が人形になったんだ。それくらいのふしぎは信じるけど、あんたは1週間もどうやって生き残ったんだ?」




 永亜(とあ)が聞くと、那成(ななる)は力なく笑って、バックヤードを見回す。

 広いこの空間には、たくさんの段ボールが積み上げられていた。




「どうしてかは分からないけど、あの着ぐるみは扉を開けられないみたいでね。ここには絶対、入ってこないんだ」




(扉を、開けられない…?)

 乃花(のか)那成(ななる)の後ろの扉を見つめる。




「そしてここには、懐中電灯や、たくさんの食べ物、飲み物があった。だから僕は、ずっとここにいたんだ。助けが来るのを待って」


「助け…ね。あんたが1週間もここにいたってことは、その助けってのはこないんだろ」


「え…」


「…お兄ちゃん…」