ぶっきらぼうに答えた永亜(とあ)を見て、乃花(のか)は眉を下げつつも視線をそらさなかった。

(瀬戸川くん、やっぱりぶっきらぼうな態度だけど…思ってたより、やさしいな…)

 振り返ってみれば、スーパーが停電してから、乃花(のか)はずっと永亜(とあ)に助けられている。


 永亜(とあ)を苦手に思う気持ちは、少しずつ減っていた。

 それと同時に、乃花(のか)の頭には、先ほど見た、人形へと変わった蕗咲(ろさ)の姿が焼きついていた。




蕗咲(ろさ)、ちゃんは…」




 ぽつりとつぶやいた乃花(のか)に答える声は、ない。

 永亜(とあ)來璃(らる)もだまりこんだままで、那成(ななる)だけが、「あの、女の子?」と静かに聞いた。