「乃花、お菓子買ってあげる。どれがいい?」
「えっ、本当?うーんとね…」
母に声をかけられて、パッと表情を明るくした乃花は、目の前にならぶチョコレートやクッキーを見て、考えこみ始めた。
(甘いチョコレートがいいかなぁ。でも、クッキーも食べたいな。チョコチップのクッキー?でも、チョコをたっぷり味わいたい…)
あちこちに視線を動かして、だまりこんでいる乃花を見た母は、眉を下げてせっつく。
「まったくもう、乃花はお父さんに似て優柔不断なんだから。早く決めなさい」
「だってぇ…決まったら持っていくから、お母さん、先に行ってていいよ」
「ダメよ。ここのスーパーで、親とはぐれて行方不明になった子どもがいるってうわさなんだから」
乃花は、ピクッと肩をゆらして母を見上げた。
「行方不明…って?」