腰が引けているのは、乃花(のか)だけである。

(ピカピカうさぎ…で、でも、あんなに不気味なのに…近づくの…?)

 乃花(のか)は眉も、口のはしも下げて、歩きながらこちらに近づいてくる“ピカピカうさぎ”を見つめた。


 蕗咲(ろさ)は結局、乃花(のか)の答えを待たずに「蕗咲(ろさ)行ってくるね!」と小走りでピカピカうさぎのほうへ行ってしまう。

 乃花(のか)はあわてて、蕗咲(ろさ)のあとを追いかけた。




「ま、待って、蕗咲(ろさ)ちゃん!私も一緒に行くから…っ」




 ピカピカうさぎの不気味な顔に目を向けないよう、視線を下げながら走る乃花(のか)のうしろを、永亜(とあ)來璃(らる)も歩きながらついてくる。

 お互いに近づいていることで、ピカピカうさぎとの距離がちぢまるのはわずか数秒のことであった。

 蕗咲(ろさ)があと数歩でピカピカうさぎに触れられる、という位置まで近づくと、乃花(のか)たちのうしろのほうから、知らない男の子の声がひびく。