「姫様、何故あんなヤツを…」

ルカは姫様と部屋を出て、見張りに任せた。

「あの子はルカ、あなたより腕の立つ暗殺者よ。 今は情報を最優先に聞き出すのが先だわ。 それに情報があってるかも調べて。」

姫様は冷静で賢く、現状を見て、僕への判断をしている。

「ですが…今のヤツなら…カラスなら殺れます。」

「ダメです。 情報が先と言ったはずですよ、ルカ…今はあの子の危害は加えないと言う言葉を信じましょう。」

「分かり、ました…」




気を失っている僕を見つめている女性がいる。

彼女は未だ、疑い、警戒心を持ったまま僕を見張っていた。

寝顔は子供であり、白髪で整った顔立ちに見惚れてしまう程の容姿は美しい…

こんなヤツが暗殺者…なのか、首にナイフを突き付けたのに、ビクとも反応しなかった。

拘束されていたとはいえ反応出来なかった訳では無いのだろう…

左手の手枷は外していたのだから、防ぐことは出来たはず…

「クソ、わかんねぇ~っ。」

ルカは考えながら、独り言を呟き、頭を掻きむしる。

「お前はなんで、そんな傷だらけの身体になるまで暗殺者をしてるんだ?」

ルカは可哀想な…哀れそうな声で僕を覗き込み、呟いた。

「ぼくが、生きてく、為には、暗殺者に、なるしか、無かった… この目で、この容姿で、酷い扱い、にあった…だから、殺るしか、なかった…。」

僕はカタコトで答え、目を覚まし、ルカを見つめる。

赤い瞳の左目を見せて、また目を閉じた。

「綺麗な瞳だな…」

優しく囁くルカの言葉を僕は薄れゆく意識の中で聞いていた。

(この目を綺麗…だなんて言う人は貴方が初めてだよ…)

少しだけ気持ちが緩み、ゆっくりと安らかな眠りに襲われ身を任せた。

「ゆっくり休め。」
優しい声と頭を撫でられている感覚が夢であるかのように感じたのだった。