食事が粥に変わって数日…
僕の拘束は解かれ、部屋の中でだけは自由に動き回れるようになっていた。

これはルカが僕の裏付けを取って、危害を加える可能性が無いと判断されたからである。

だが、僕はルカの留守中に見張りの人たちを困らせていた。

1週間で見張りの人は次々と入れ替わった。


ルカは帰って来るなり、事情を知って、僕の部屋に乗り込んで来た。

「おい、イブキ…お前は何で私以外の人に迷惑をかけてんだ…。 私は言ったよな、他の人を困らせるな…と。」

「だって…知らない、人…怖い…。」

ルカは僕の部屋に来てそうそうに説教を始める。

ショボンと落ち込んだ僕は言い訳しつつ、素直に謝った。

「ごめん、なさい…」

そんなやり取りを見て、声を上げて笑っている人がいる。

姫様だ。

彼女は不思議な感じの女性である。

「あら、ごめんなさい。 ルカにだけは懐いているあなたを見ていたら面白くて、つい…うふふ。 あと、困っているルカにも…ね。」

笑い続ける姫様…

「じゃぁ、姫様がコイツの面倒を見てくださいよ。」

姫様を見つめ、呆れながらルカは意義を唱えていた。

「私では無理よ、だって…この子、貴方にしか心を開いてないもの。 そうでしょ?」

姫様の突然の問に僕は頷く。

「でも…姫様の事、嫌いじゃ、ない…むしろ、ルカの、次、くらいには、好き、かも。」

首を傾げながら、姫様とルカを交互に見つめ、僕は答えた。

「やぁーん、可愛い過ぎ…ハグしていい?」

姫様は僕に手を広げ、尋ねながら、構えていた。

返事をせずに僕は姫様の腕の中へ…。
ついでに胸に顔を埋めて抱きついた。

「んんんっ、可愛いわ。 ねぇ、私も名前で呼んでもいいかしら?」

少し身体を離し、見下ろされながら、尋ねられた僕は上目遣いで頷く。

すると彼女からまた胸に埋まり、抱きしめられ続けたのだった。

「ちょっと、苦しい…でも、フカフカ…」

僕の呟きにルカは怒り始めた。

「リオ…そろそろイブキを離しなさい。 まだ、イブキの傷は完治してないんだから。 それとイブキ…リオの胸を楽しんでんじゃないよ、この変態…。」

顔を真っ赤にしたルカが大きな声で声を上げ、僕とリオを叱っている。

「ルカも混ざりたいなら、素直な混ぜて…? って言えば良いのに。」

「ルカも混ざる?」

僕とリオの話につられ、ルカは僕たちを抱きしめた。

だが、ルカは冷静さを取り戻すと更に真っ赤な顔で崩れ落ちる。

ルカが回復するまでは時間がかかりそうだった。


僕が自由になったのもつかの間…

リオは寂しそうに告げた、「疑いは晴れたのだから自由にしてもらっていいわよ」と。

「それはつまり…僕はこの城から追い出されるの? ヤダ、僕はリオとルカの従者になる。」

突然のワガママと申し出にルカとリオの思考が止まった。

「ん、…と、それはリオの為に生きるって事…?」

理解出来ていないルカに首を振り…

「リオのじゃ、無くて、ルカにも、仕えたい。 ルカとリオを護る為にそばにいたい。」

「イブキ…私はリオの従者だから、私の従者にはなれないんだが…。」

「つまり…イブキ君は私の従者であり、ルカの従者にもなりたいって事ね。 私たち二人を主にしたいってことで合ってるかしら?」

冷静になって僕の言葉を理解しようとしている。

「そう、僕ね、ルカもリオも護れるよ。 だから、僕の主になって…ルカ…リオ…?」

僕は2人に手を差し出す。

2人は僕の手を真剣な表情を見つめた。

いつもの僕とは違う雰囲気を感じ取る彼女たちは僕の手を取ってくれた。

「ただし、条件がある(あります)。」

2人の声が重なり、話した内容…
それはルカと一対一の試合だった。