僕は施設育ちだ。

物心着いた時には既にここにいた。

何故ここで育てられているのかは分からない。
ただ、ひとつ分かっていることは、とある研究所の爆発事故で唯一、生き残った僕を当時の施設の院長先生に救われ、今に至る。


ここはとある孤児院…。

優しい院長先生のお陰ですくすくと育ち、5年が経った。

周りの子はほかの先生や仲間と元気良く遊び、明るい声をあげて駆けずり回っている。

ただ一人を除いて…。

白髪で紅い瞳の左目、人間離れした容姿…
性別不明の見た目と無表情で言葉を話さない無気味な子。

愛想も悪く、容姿で気味悪がられている為、いつも独り。

表情を表に出すのが下手で、口も聞けない僕は、院長先生にしか懐かず、普段は一人で本を読んでいる子だった。

本といっても子供向けの絵本では無く、院長先生に借りた、難しい本ばかり読んでいる。

僅か5歳…にしては、優秀すぎる程の記憶力と理解力があると院長先生は僕に優しく教えてくれた。

だが、そんな幸せな時間は儚く散った…。

僕に優しかった院長先生が突然この世を去った。

死因は不明…。

噂では病では無いか?
とか、孤児院の資金集めで走り回っていた事による疲労と精神的なモノによる自殺…
などと言う話が広まっている。

さらに、僕のせいでは?
と言う噂もあった。

哀しかった、初めて僕は涙を流した。


優しかった院長先生が亡くなった翌日には新たな院長先生が現れた。

この孤児院を立て直す為、教育と環境の見直しから始まった。

子供たちは規律と教育と言った学業や生活態度を改めさせる事を重視するようになる。

初めにできた規律は勉学でのランキング付け…
優秀で上位の者にはご褒美を与え、下位の者には罰を与えると言う方針に変わった。

先生達も同様に評価される側になり、厳しく子供たちを教育するようになった。

新たな方針と院長により、孤児院は僅か半年で立て直し、評価も上がっていく。

この孤児院は「子を欲しがる貴族」が養子縁組に訪れるまでに環境は激変していた。


理由は僕である。

学業面も容姿もダントツだった僕は新たな院長によってこの孤児院の引き立て役にされたからだ。

問題は僕を養子縁組に出せない事だ。

白髪で紅い瞳の左目、言葉を話せない、愛想も無く人に懐かない…無気味で気味の悪い子…であるからだった。

それでも新たな院長は、僕には利用価値があると考えている。

何故なら、人間離れした容姿、性別不明の見た目、人を惑わす妖艶な雰囲気を纏う僕は、それだけで貴族への利用価値があるらしい。

手始めに与えられた僕への仕事は…
「特殊な趣向を持つ貴族達への玩具」…としての提供。

特殊な趣向を持つ貴族へ心を満たす為の商品となった。

貴族達にお金で買われ、人形になる事…
それが、僕の与えられた役目。

でも、規約はある。
性的な行為、または身体に触れる行為は禁止…と。

要は美術品を眺める様なものだ。

服の着せ替えや絵のモデル、服を着ていれば抱きしめたり、触れたり、膝の上に乗せることは認められている。

違反者が出れば、この孤児院への出入り禁止のうえ、莫大な金額を支払わせる仕組みだ。


これがこの孤児院を立て直した、裏のお話である。