「近くにいるのが迷惑だって言ってる。御三家もこの調子で毎日お喋りに付き合わされていたと思うと些か同情するな」
「桐椰くんは優しいから紅茶とお菓子を出してくれるんです」
「お菓子ならこの間俺も出したから実質優しさは同値だな」
「鹿島くん、話が非論理的にもほどがありますけど、さすがに熱にうかされてるんじゃないですかね」
「確かに、桐椰より優しい自信がある」
「自分を客観的に見る癖つけたほうがいいと思うけど」
「どうでもいいことなんだが、この調子で冬休みはどうするつもりなんだ?」
ゴト、と鹿島くんはペットボトルを手放した。最初に一口飲んでから口をつけようとしない。水分を摂る体力さえ足りないのだろうか。
「そもそも、夏休みは」
「長くて大変だったよ。でも夏休みって年末年始と違って休館日とかにはならないからね、図書館万歳だったよ」
「つまり冬休みは逃げ場がないと。ご愁傷様」
「そういう鹿島くんのお家事情はいかがなんですかね。鬼のように厳しい母親にいびられたりしてないんですかね」
「答える義理はないが、聞きたいなら──」
「あー、いいです、興味ないです。質問権行使の際にはその旨伝えますので、それ以外の場で勝手に質問カウントして権利奪わないでくださいね」
手でバツを作ってみせると、鹿島くんの目が据わる。とはいえ、何か気になることがあったわけではなさそうだ。すぐにその目は伏せられて、体力の消耗を告げる。
「……言っておくが、今日はお前に構ってる暇はない。いるなら静かにしてろ」
「暇じゃなくて余裕がないんでしょ、プライド高いなー」
「君こそ、油断してるからといって俺のことを名前で呼ぶのはやめたのか?」
「できれば呼びたくないからね。鹿島くんだって私のことをお前って呼んだり君って呼んだりちぐはぐだよ。やっぱり松隆くんみたいな口調はキャラ設定だったのかな」
「病人相手に減らず口を叩くな。……本当、疲れる」
しっし、と出ていけとでもいうように鹿島くんは手を振ってみせた。私だって病原菌の蔓延する部屋に居座るなんてまっぴらごめんだ。
「ま、せいぜい苦しむがいいですよ。あ、間違えた、お大事に」
「わざとらしいとってつけたような見舞いの言葉は要らない」
「桐椰くんは優しいから紅茶とお菓子を出してくれるんです」
「お菓子ならこの間俺も出したから実質優しさは同値だな」
「鹿島くん、話が非論理的にもほどがありますけど、さすがに熱にうかされてるんじゃないですかね」
「確かに、桐椰より優しい自信がある」
「自分を客観的に見る癖つけたほうがいいと思うけど」
「どうでもいいことなんだが、この調子で冬休みはどうするつもりなんだ?」
ゴト、と鹿島くんはペットボトルを手放した。最初に一口飲んでから口をつけようとしない。水分を摂る体力さえ足りないのだろうか。
「そもそも、夏休みは」
「長くて大変だったよ。でも夏休みって年末年始と違って休館日とかにはならないからね、図書館万歳だったよ」
「つまり冬休みは逃げ場がないと。ご愁傷様」
「そういう鹿島くんのお家事情はいかがなんですかね。鬼のように厳しい母親にいびられたりしてないんですかね」
「答える義理はないが、聞きたいなら──」
「あー、いいです、興味ないです。質問権行使の際にはその旨伝えますので、それ以外の場で勝手に質問カウントして権利奪わないでくださいね」
手でバツを作ってみせると、鹿島くんの目が据わる。とはいえ、何か気になることがあったわけではなさそうだ。すぐにその目は伏せられて、体力の消耗を告げる。
「……言っておくが、今日はお前に構ってる暇はない。いるなら静かにしてろ」
「暇じゃなくて余裕がないんでしょ、プライド高いなー」
「君こそ、油断してるからといって俺のことを名前で呼ぶのはやめたのか?」
「できれば呼びたくないからね。鹿島くんだって私のことをお前って呼んだり君って呼んだりちぐはぐだよ。やっぱり松隆くんみたいな口調はキャラ設定だったのかな」
「病人相手に減らず口を叩くな。……本当、疲れる」
しっし、と出ていけとでもいうように鹿島くんは手を振ってみせた。私だって病原菌の蔓延する部屋に居座るなんてまっぴらごめんだ。
「ま、せいぜい苦しむがいいですよ。あ、間違えた、お大事に」
「わざとらしいとってつけたような見舞いの言葉は要らない」