「まぁ、俺は写真を見返すタイプでもないから。こういうのは遼に任せる」

「え、なになに? やっぱり二人はできちゃってるの?」

「もうリアクションも面倒になってきたから黙ってもらえるかな」


 その後、月影くんがダメ押しとばかりにジョーズを提案したけれど、全員一致の却下だったので、最後も屋内アトラクションとなった。月影くんは残念そうな顔のままだったけれど、夕方になっても雨は止まなかったのでどうしようもない。その後はお土産を見て、ホテルに帰るだけになった。


「雨、少し弱くなったね」


 結局、午後からはずっと雨で、ホテルに入って漸く弱まった程度だった。夕食後、窓の外を眺めながら、松隆くんは顔をしかめた。その目蓋が重そうなのは、旅行の疲労半分、低気圧の影響半分、といったところだろう。


「外にいる間は結構降ってたのにな。ついてねぇ」

「今日は午後ずっと雨予報だったし、仕方ないでしょ」

「明日は晴れだっけ?」

「そうだな」

「よかったー、市内散策が雨なんてめんどくさいもーん。亜季もよかったねー、待ち合わせが雨なのはちょっとロマンチックだけど」

「うん、まぁ、うん、でもロマンチックさの欠片もない相手だからね」


 そんなことを言いつつも、久しぶりに彼方に会うのは、ちょっとだけ楽しみではあった。どうせ彼方は底抜けに明るいから、会うだけでもわりと気分が楽になる。後ろ暗い気分も一緒についてはくるけれど、それは過去を共有してるからこそで、そこがセットになってしまうのはどうしようもない。


「そうなの? 年上男子なんてそれだけでロマンチックだけどなー」

「うーん、でも本当に、そういうのじゃないんだよね……女好きだし、適当だし……」

「なんか彼方兄さんみたいだね、その人」


 松隆くんの鋭い指摘に、ギョッと身体は飛び上がる。


「あの人、どうせ今でも大体何でも適当でオッケー軽薄万歳女の子大好き状態なんでしょ?」

「人の兄になんつー言い方すんだよ、お前は。事実だけど」

「そういえば彼方兄さんも大阪にいるな」

「別人ですよ」


 月影くんがあからさまに怪しんだ視線を向けたので、できるだけ平静を装いながら、強く否定する。彼方と会ってるってバレたら、桐椰くんと松隆くんには言い訳ができない。


「いい加減彼女は一人に絞ったのか?」