「あ、待て、総から電話。……迷子じゃねーよ、地図持ってるヤツに置いてかれたらどうしようもねーに決まってんだろ。すぐ行くから待ってろよ」
スマホを取り出した桐椰くんの手から傘を預かったこともあって、その声の主を探すことは、しなかった。
スパイダーマンのある建物の前までくると、三人は待機列にも並ばずに待っててくれたけれど、松隆くんには「迷子センターに連絡したほうがよかったな」なんて煽られた。逆に松隆くんを迷子で呼び出してみたいけれど、そんなことをした瞬間に殺人事件でも起きそうだな。
「スパイダーマン、どのくらい待ちそう?」
「あんまり待たないで済みそうだよ。この天気で人が少ないからね」
松隆くんの言う通り、暫くは立ち止まることなくひたすら進むことになるくらい、建物内は空いていた。お陰で、列形成のために用意されている順路をまどろっこしく感じてしまう。
「よかった、てっきり屋内アトラクションは混むと思ってたから」
「この天気だもんね。ただ、そもそもの母数が少ない」
「修学旅行生と思しき集団はいたように思うが」
「地元の高校生じゃないの、あれ。関西弁だったし」
「平日だぞ?」
「自主休日なんじゃないの」
つまりサボリだ。そんなことをするなんて正気の沙汰じゃない、とあの人の顔を思い浮かべる。でも、一日二日無断で休むくらいなら、あの人は無関心かもしれない。実際、お母さんのお墓参りに行った日は何も言われなかった。
「ねー、亜季は明日はこっちの友達と遊ぶんだよね?」
「ん? うん」
そんなことを考えながら三人を交互に見ていると、隣のふーちゃんが訝し気に首を捻る。
「相手、高校生じゃないの? 大学生?」
確かに、平日に出てくるとなれば高校生のはずがない……! そこまで考えていなかった。実際、彼方は「五限しかないから、それに間に合うように出ればオッケー」と話していたけれど、そんな変則的な予定は大学生ならでは。
不思議そうなふーちゃんから目を逸らさないようにしながら言い訳を練る。
「あー、うん。中学のときに近所に住んでた友達で、少し年上なんだよね」
「なーるほど。男? 女?」
「男だけど、彼女がいない時期がないと言っても過言じゃないから、今も彼女いるんじゃないかな」
スマホを取り出した桐椰くんの手から傘を預かったこともあって、その声の主を探すことは、しなかった。
スパイダーマンのある建物の前までくると、三人は待機列にも並ばずに待っててくれたけれど、松隆くんには「迷子センターに連絡したほうがよかったな」なんて煽られた。逆に松隆くんを迷子で呼び出してみたいけれど、そんなことをした瞬間に殺人事件でも起きそうだな。
「スパイダーマン、どのくらい待ちそう?」
「あんまり待たないで済みそうだよ。この天気で人が少ないからね」
松隆くんの言う通り、暫くは立ち止まることなくひたすら進むことになるくらい、建物内は空いていた。お陰で、列形成のために用意されている順路をまどろっこしく感じてしまう。
「よかった、てっきり屋内アトラクションは混むと思ってたから」
「この天気だもんね。ただ、そもそもの母数が少ない」
「修学旅行生と思しき集団はいたように思うが」
「地元の高校生じゃないの、あれ。関西弁だったし」
「平日だぞ?」
「自主休日なんじゃないの」
つまりサボリだ。そんなことをするなんて正気の沙汰じゃない、とあの人の顔を思い浮かべる。でも、一日二日無断で休むくらいなら、あの人は無関心かもしれない。実際、お母さんのお墓参りに行った日は何も言われなかった。
「ねー、亜季は明日はこっちの友達と遊ぶんだよね?」
「ん? うん」
そんなことを考えながら三人を交互に見ていると、隣のふーちゃんが訝し気に首を捻る。
「相手、高校生じゃないの? 大学生?」
確かに、平日に出てくるとなれば高校生のはずがない……! そこまで考えていなかった。実際、彼方は「五限しかないから、それに間に合うように出ればオッケー」と話していたけれど、そんな変則的な予定は大学生ならでは。
不思議そうなふーちゃんから目を逸らさないようにしながら言い訳を練る。
「あー、うん。中学のときに近所に住んでた友達で、少し年上なんだよね」
「なーるほど。男? 女?」
「男だけど、彼女がいない時期がないと言っても過言じゃないから、今も彼女いるんじゃないかな」