鹿島くんの不可解な行動を思い返していたせいで、鶴羽の台詞の後半は頭に入ってこなかった。確かに、鹿島くんの行動で不可解なものはいくつかあった。中でも、校門で孝実に会ったときにわざわざ出てきたことと、その後に抱きしめに来たことが一番不可解だった。
その理由が、鹿島くんが私を好きだから……? 言葉にして考えてしまうと、ドクンと心臓が跳ねた。驚きからなのか恥ずかしさからなのか、その原因は全く分からなかった。
ただ、それは──必死に理性的に頭を回す──納得はいくけど、納得はいかない理由だ。だって、それなら、鹿島くんはどうして今でも海咲さんの写真を持っているのだろう。
「まいーや、ここまで来れたんだから。とっとと──」
そこで、ガチャン、と屋上の扉が開いた。
入って来た相手が見えていた私は驚き、鶴羽は狼狽した様子で素早く振り向き──立っている鹿島くんを見て「なんだ、お前かよ」と安堵してみせた。
いつかのように走って来たのか、鹿島くんは肩で息をしていた。今日が暖かいせいもあるかもしれないけれど、よっぽど全力で走って来たのか、額には汗が滲んでいる。それを拭い、「呼んでおきながらなんだとはなんだよ」と親し気な口調で答え、上着を脱いで片腕に持つ。
「だってお前、いつまでたっても来ないからさ」
「俺にだって普通に用事くらいあるよ……合格発表なんて忙しい日は特に」
鹿島くんは私には目もくれず、鬱陶しそうに眼鏡を外して、もう一度かけ直した。
「間に合ったんだからいいだろ? 桐椰達に見つかってねーよな?」
「ああ」
鶴羽の顔は鹿島くんに向いている。鹿島くんは、変わらず見向きもしない。
今なら、二人の意識は私以外に向いている──。そう確信して、ゆっくりと足を動かした。
が、まるで見ていたように、ナイフはぴたりと首に当て直された。意外と目敏い。
じとっと鶴羽を睨めば、鼻で笑いながら睨みなおされた。鹿島くんは、相変わらず私を見ない。
「じゃあな、幕張、タイムリミットだ。御三家が気付く前に落ちてもらわないとな」
「……私に死んでほしいだけならいいけど、わざわざ透冶くんが死んだところで、しかもそれを御三家に見せるなんて、本当に悪趣味だね」
その理由が、鹿島くんが私を好きだから……? 言葉にして考えてしまうと、ドクンと心臓が跳ねた。驚きからなのか恥ずかしさからなのか、その原因は全く分からなかった。
ただ、それは──必死に理性的に頭を回す──納得はいくけど、納得はいかない理由だ。だって、それなら、鹿島くんはどうして今でも海咲さんの写真を持っているのだろう。
「まいーや、ここまで来れたんだから。とっとと──」
そこで、ガチャン、と屋上の扉が開いた。
入って来た相手が見えていた私は驚き、鶴羽は狼狽した様子で素早く振り向き──立っている鹿島くんを見て「なんだ、お前かよ」と安堵してみせた。
いつかのように走って来たのか、鹿島くんは肩で息をしていた。今日が暖かいせいもあるかもしれないけれど、よっぽど全力で走って来たのか、額には汗が滲んでいる。それを拭い、「呼んでおきながらなんだとはなんだよ」と親し気な口調で答え、上着を脱いで片腕に持つ。
「だってお前、いつまでたっても来ないからさ」
「俺にだって普通に用事くらいあるよ……合格発表なんて忙しい日は特に」
鹿島くんは私には目もくれず、鬱陶しそうに眼鏡を外して、もう一度かけ直した。
「間に合ったんだからいいだろ? 桐椰達に見つかってねーよな?」
「ああ」
鶴羽の顔は鹿島くんに向いている。鹿島くんは、変わらず見向きもしない。
今なら、二人の意識は私以外に向いている──。そう確信して、ゆっくりと足を動かした。
が、まるで見ていたように、ナイフはぴたりと首に当て直された。意外と目敏い。
じとっと鶴羽を睨めば、鼻で笑いながら睨みなおされた。鹿島くんは、相変わらず私を見ない。
「じゃあな、幕張、タイムリミットだ。御三家が気付く前に落ちてもらわないとな」
「……私に死んでほしいだけならいいけど、わざわざ透冶くんが死んだところで、しかもそれを御三家に見せるなんて、本当に悪趣味だね」