「ああ、そんな女子いたな。誰かのカノジョだったけど……。その藤木とかいう女子が何か言おうが言うまいが、幕張を拉致ることは決まってたんだ。だから藤木が幕張を学校に来れないようにしたいって言い始めたのは、なんていうんだっけ、嬉しい誤算? お陰で、藤木とそのカレシが考えてお前を拉致ったってことになったもんな。お前が犯されちまえばいいって言ったの、その藤木だもんなー。女子って怖いよな」
「……じゃあ、あの日の目的は“テスト”だけで、雅があんなに殴られたのは、その“テスト”のためだったってこと?」
「当たり前だろ。つか、アイツにはそれしか──お前を釣る餌にしかしなかったんだから、感謝してほしいね。言っただろ、ぶち殺したいくらいムカついてんだよ、アイツだって」
ふざけないでよ、と叫ぼうとして、ガツン、と足が何かにぶつかったのを感じ、口を噤んで振り向く。背後には、錆びついた柵が立っていた。柵といっても、老朽化が進んでいて今にも崩れ落ちそうだ。──なんて思っている傍から、ぐらりと柵が揺れ、ギギギギギ、と不穏な音を立てて向こう側に傾いた。
こんなところに立っていたら、いつ落ちてもおかしくない。
鶴羽樹に向き直ると、私を横へ逃がさないためか、ナイフの刃先は鼻先にまで迫っていた。
「っ……」
「まあ、でも、お前が思った以上の成果だったから、アイツは許してやってもいいかな。お前がさぁ、あの二人に気に入られればいいなくらいに思ってたんだけど、それ通り越して好きな女だもんな」
成果……。その単語に聞き覚えがあって、ゆっくりと記憶を探る。確か……鹿島くんも言っていた。思った以上の成果だ、と。あれは、想定以上に私が御三家と仲良くなったことだったのか。
「ま、一個誤算はあったけどな。明貴人が全然やる気になってくれねぇ。今日だってこのとおり、生徒会を優先する有様だからな」
「……鹿島くんが協力してくれなくなったのは、鹿島くんは、本当は桐椰くん達のせいなんかじゃないって気付いたからじゃないの」
「ちげーよ。アイツはお前に浮気しただけだ」
一際大きくなった声と、その内容に、状況も忘れて「は?」と声が出た。私に浮気?
「どういう……」
「……じゃあ、あの日の目的は“テスト”だけで、雅があんなに殴られたのは、その“テスト”のためだったってこと?」
「当たり前だろ。つか、アイツにはそれしか──お前を釣る餌にしかしなかったんだから、感謝してほしいね。言っただろ、ぶち殺したいくらいムカついてんだよ、アイツだって」
ふざけないでよ、と叫ぼうとして、ガツン、と足が何かにぶつかったのを感じ、口を噤んで振り向く。背後には、錆びついた柵が立っていた。柵といっても、老朽化が進んでいて今にも崩れ落ちそうだ。──なんて思っている傍から、ぐらりと柵が揺れ、ギギギギギ、と不穏な音を立てて向こう側に傾いた。
こんなところに立っていたら、いつ落ちてもおかしくない。
鶴羽樹に向き直ると、私を横へ逃がさないためか、ナイフの刃先は鼻先にまで迫っていた。
「っ……」
「まあ、でも、お前が思った以上の成果だったから、アイツは許してやってもいいかな。お前がさぁ、あの二人に気に入られればいいなくらいに思ってたんだけど、それ通り越して好きな女だもんな」
成果……。その単語に聞き覚えがあって、ゆっくりと記憶を探る。確か……鹿島くんも言っていた。思った以上の成果だ、と。あれは、想定以上に私が御三家と仲良くなったことだったのか。
「ま、一個誤算はあったけどな。明貴人が全然やる気になってくれねぇ。今日だってこのとおり、生徒会を優先する有様だからな」
「……鹿島くんが協力してくれなくなったのは、鹿島くんは、本当は桐椰くん達のせいなんかじゃないって気付いたからじゃないの」
「ちげーよ。アイツはお前に浮気しただけだ」
一際大きくなった声と、その内容に、状況も忘れて「は?」と声が出た。私に浮気?
「どういう……」