「……それが、俺と樹の約束だからだよ」
約束? 弱味を握られてるなら「取引」というほうが鹿島くんらしい気がするから、鹿島くんが鶴羽樹に従わないといけない理由があるわけではない……? 不可解そうな表情をする私を、鹿島くんは鼻で笑った。
「ひとつだけって俺は言っておいたのに、随分色々聞くもんだな」
「あ……そうだった……。じゃあ今からのことは本当とは限らないのか……」
「いや、まあいい。君は、俺との賭けに勝ったんだから」
賭け? そんなものしてた覚えがない。首を傾げていると「でも約束の内容までは、話す必要はないか」と鹿島くんは気分を変えてしまった。
「……ねえ、最初の質問に戻るけど、だから、鹿島くんは藤木さんとか鳥澤くんを唆したわけじゃないんだよね?」
「そうだね。特に藤木は全く関係ないな……。雁屋と月影の件は、騒ぎの現場にいたから知ってはいたし、何かしたかと言われたら、雁屋を弾劾する手助けをしたくらいだな」
「……そうなの?」
「ああ、そこまでは聞いてないのか。だとしても、今、俺から聞く必要はない話さ」
月影に関わることなんだから、俺が話すことじゃないだろう、と。掌を返すような誠実さは、かえって居心地を悪くさせる。歪な態度には顔をしかめざるを得ないけれど、その歪さまで含めて、きっと理由は一つだ。
「なんで嘘を吐いたの?」
「言っただろ、樹との約束だって」
「どんな約束?」
「君には関係のない、約束だよ」
さあ、と鹿島くんは立ち上がり、私に出ていくように促した。結局答えになってない答えしかくれていないのに。
「まあいいや、カノジョだからね、また放課後に聞きにくるよ」
「もう必要ない。俺と別れていいよ」
「え?」
「俺と別れていいよ」
何を言われたのか分からずに立ち尽くしてしまった。呆然というか、唖然というか、とにかく鹿島くんの台詞と態度が理解できずに当惑してしまった。
「別れたくないっていうなら別に無理して別れようとは思わないけど、少なくとも、俺は君と付き合う必要性を感じていないし、君もそうだろう。ここで別れておいていいと思うけどね」
約束? 弱味を握られてるなら「取引」というほうが鹿島くんらしい気がするから、鹿島くんが鶴羽樹に従わないといけない理由があるわけではない……? 不可解そうな表情をする私を、鹿島くんは鼻で笑った。
「ひとつだけって俺は言っておいたのに、随分色々聞くもんだな」
「あ……そうだった……。じゃあ今からのことは本当とは限らないのか……」
「いや、まあいい。君は、俺との賭けに勝ったんだから」
賭け? そんなものしてた覚えがない。首を傾げていると「でも約束の内容までは、話す必要はないか」と鹿島くんは気分を変えてしまった。
「……ねえ、最初の質問に戻るけど、だから、鹿島くんは藤木さんとか鳥澤くんを唆したわけじゃないんだよね?」
「そうだね。特に藤木は全く関係ないな……。雁屋と月影の件は、騒ぎの現場にいたから知ってはいたし、何かしたかと言われたら、雁屋を弾劾する手助けをしたくらいだな」
「……そうなの?」
「ああ、そこまでは聞いてないのか。だとしても、今、俺から聞く必要はない話さ」
月影に関わることなんだから、俺が話すことじゃないだろう、と。掌を返すような誠実さは、かえって居心地を悪くさせる。歪な態度には顔をしかめざるを得ないけれど、その歪さまで含めて、きっと理由は一つだ。
「なんで嘘を吐いたの?」
「言っただろ、樹との約束だって」
「どんな約束?」
「君には関係のない、約束だよ」
さあ、と鹿島くんは立ち上がり、私に出ていくように促した。結局答えになってない答えしかくれていないのに。
「まあいいや、カノジョだからね、また放課後に聞きにくるよ」
「もう必要ない。俺と別れていいよ」
「え?」
「俺と別れていいよ」
何を言われたのか分からずに立ち尽くしてしまった。呆然というか、唖然というか、とにかく鹿島くんの台詞と態度が理解できずに当惑してしまった。
「別れたくないっていうなら別に無理して別れようとは思わないけど、少なくとも、俺は君と付き合う必要性を感じていないし、君もそうだろう。ここで別れておいていいと思うけどね」