ここ数ヶ月、ほとんど毎日鹿島くんと話していただけあって、そのニュアンスの微妙な変化を感じ取れるようになってしまっていた。逆もまたしかりなんだろう、鹿島くんは見抜かれたことに大して驚きもせず、肩を竦めて返した。
「ねー、何にイライラしてるの? 何か嫌なことあった?」
「嬉々として訊ねることじゃないだろ、それは」
「ねー、なになに?」
「午後からの行事が面倒臭くて腹の虫の居所が悪いんだが、それとは別に、コソコソ周りを嗅ぎ回られたことに苛立ってないといえば嘘になるね」
……深古都さんに調べてもらっていたことがバレている。あれだけ詳細に調べてもらっては仕方がない。鹿島くんと鶴羽樹に気付かれることは、少しくらいは織り込み済みだ。
「まあまあ、同じことは鹿島くんだってしてるでしょ?」
「適度にな」
「私にとっては全然適度じゃなかったけどな」
「それで、収穫はあったのかい?」
座りなおした鹿島くんは、テーブルに頬杖をついて、まっすぐに私を見た。急にその口調が変わったのを、皮肉にも敏感に気付いてしまい、私も椅子に座りなおす。
鹿島くんは、いつかと同じ、挑むような眼で私を見ていた。
意を決して、少しだけ大きく息を吸った。
「一つだけ、質問」
数を決めただけで、鹿島くんには意図が伝わったようだ。鹿島くんの目が僅かに細くなる。
「……なんだ」
年末、鹿島くんは「ひとつだけ本当を答える」と言った。その答えに対する質問。
「……鹿島くんが」
きっと、鹿島くんはその質問を分かっている。少なくとも質問の意図は既に分かっている。
「鹿島くんが、黒幕だっていうのは、嘘だよね」
沈黙が落ちた。鹿島くんは肯定も否定もせず、ただ黙って私を見つめ返している。
それがどんな答えなのか分からず、もう一度口を開いた。
「……鹿島くんが透冶くんを自殺に追いやった話も、藤木さんとか鳥澤くんを唆したって話も、嘘だよね。……その嘘を吐いたのは、どうして?」
やはり、鹿島くんは黙っている。返事をする気配がないのではなく、考え込んでいるようだ。
でも、その答えをただ待っているほど、辛抱強くはいられなかった。つい、焦るように、形を変えて促してしまう。
「ねー、何にイライラしてるの? 何か嫌なことあった?」
「嬉々として訊ねることじゃないだろ、それは」
「ねー、なになに?」
「午後からの行事が面倒臭くて腹の虫の居所が悪いんだが、それとは別に、コソコソ周りを嗅ぎ回られたことに苛立ってないといえば嘘になるね」
……深古都さんに調べてもらっていたことがバレている。あれだけ詳細に調べてもらっては仕方がない。鹿島くんと鶴羽樹に気付かれることは、少しくらいは織り込み済みだ。
「まあまあ、同じことは鹿島くんだってしてるでしょ?」
「適度にな」
「私にとっては全然適度じゃなかったけどな」
「それで、収穫はあったのかい?」
座りなおした鹿島くんは、テーブルに頬杖をついて、まっすぐに私を見た。急にその口調が変わったのを、皮肉にも敏感に気付いてしまい、私も椅子に座りなおす。
鹿島くんは、いつかと同じ、挑むような眼で私を見ていた。
意を決して、少しだけ大きく息を吸った。
「一つだけ、質問」
数を決めただけで、鹿島くんには意図が伝わったようだ。鹿島くんの目が僅かに細くなる。
「……なんだ」
年末、鹿島くんは「ひとつだけ本当を答える」と言った。その答えに対する質問。
「……鹿島くんが」
きっと、鹿島くんはその質問を分かっている。少なくとも質問の意図は既に分かっている。
「鹿島くんが、黒幕だっていうのは、嘘だよね」
沈黙が落ちた。鹿島くんは肯定も否定もせず、ただ黙って私を見つめ返している。
それがどんな答えなのか分からず、もう一度口を開いた。
「……鹿島くんが透冶くんを自殺に追いやった話も、藤木さんとか鳥澤くんを唆したって話も、嘘だよね。……その嘘を吐いたのは、どうして?」
やはり、鹿島くんは黙っている。返事をする気配がないのではなく、考え込んでいるようだ。
でも、その答えをただ待っているほど、辛抱強くはいられなかった。つい、焦るように、形を変えて促してしまう。