「……その、決して遊びではないんです……いえ、悪気はなかったんです……その、野次馬根性もあったわけじゃなくて……」

「俺の目を見て話してくれる?」

「はい……」


 鳥澤くんも何か助け船を! と、ちらちらと視線を送ると、こちらを見ない鳥澤くんの横顔が強張る。私に見られていることには気付いているようだ。ぱくぱくと、困ったように (というか実際困ってはいる)何度か口を開閉し、意を決したように「その、ですね……」と口火を切る。


「今回……俺がいるのは、その……俺も、十二月に、月影と色々あって……」

「そうだね」

「……それで、桐椰と月影は松隆の父親に顔が割れてるわけだし、俺が動くしかないということに……」

「何に動くかによるよね」


 鳥澤くん、尋問に耐えられず私に目で助け船を求める。ですよね。


「……その、ですね……鳥澤くんといえば、鶴羽くんに嵌められて、色々ありましたよね……」

「そうだね」

「……それで……もしかしたらこれからも鶴羽くんが何か仕掛けてくるんじゃないかと思って……でも鶴羽くんは何してるのか分からないし……」

「そうだね」


 だめだ……完全に蛇に睨まれた蛙状態だ。ペラペラと、(せき)を切ったように情報が溢れ出てしまう。変わらない松隆くんの目の温度に拷問されてるみたいだ。


「……ふーちゃんの執事の深古都さんが、実は昔、桐椰くんのお兄さんと一緒にやんちゃしてた元ヤンで」

「うん」


 というか、この辺りは鳥澤くんにも教えていない情報だ。もちろん、今回のことに協力させた以上、鶴羽樹の件は話すことになるだろうけれど、深古都さんが元ヤンでというのは言わないほうがよかったかもしれない。私、深古都さんに消されたらどうしよう。


「……だから、深古都さんに聞けば、鶴羽くんのことが何か分かるんじゃないかって。そしたらその交換条件が……その……」

「俺に水をかけることだった?」

「いや違います。断じて違います」


 にっこりと微笑まれ、慌ててその言葉尻を浚うように否定した。鳥澤くんもぶんぶん首を横に振っている。笑っても真顔でもどっちでも怖いんだよ、松隆くんは。


「それはあくまで手段で……」

「俺に恥をかかせてお見合いをぶっ壊そうと?」