「あー、松隆くんならねー、昔遊んだ女の人に『遊びなんてひどい!』って水かけられたから、今着替えてるのー。本当に残念な王子様だよねー!」
……ふーちゃん。桐椰くんと月影くんはニヤッと笑ったけれど、私と鳥澤くんは笑いを堪えた。脳内で再現されてしまったあの光景といい、ふーちゃんの“本当に”という形容といい、場所が場所でなければ文字通り抱腹絶倒だったけれど、笑ってはいけない。
だが深古都さんの鉄仮面は今日も同じだ。「そうですか」と短く興味なさそうに答えただけだった。
「旦那様はなんと?」
「え? まあ若気の至りって誰にでもあるからねーって」
「いえ、婚約相手としての話ですが」
だめだ、字面に笑ってしまう。私達高校生だよ? 高校二年生だよ? これから大学受験しようかなってお年頃だよ? それなのに婚約って何。
「あれー? 深古都、お父さんから聞いてないの?」
「迎えを頼まれただけですので」
「この話はなくなったよー。松隆くんがお父さんの説得に成功したから。あ、そういう意味では残念な王子様とか言っちゃだめなのかなー」
「説得ですか」
「それ、俺らも詳しい話聞きたいんだけど、アイツ何話したの?」
桐椰くんの口がひきつっていて、笑いをこらえているのが分かる。みんな水をかけられた松隆くんを笑いものにしてるけれど、それでいいのか。仮にも親友なのに!
「んー、詳しくは聞いてないんだけど、やっぱり松隆くんのお父さんとしては松隆くんを落ち着かせたかったらしいから……。でも松隆くんのお父さんってあんまり許嫁とか好きじゃないらしくって、あたしが松隆くんのこと好みじゃないって分かったらわりとすんなりって」
「あの松隆が好みじゃないって言いきるのすごいな……」
それは最初から何度も聞いたので今更驚かない。ただ、桐椰くんが「うーん」と唸るとおり、単純にその理由だと今までのお見合いと違って進行していた理由が分からない。深古都さんも少し釈然としないようで、顎に手を当てて考え込んだ。
「……そうですか」
「いやー、よかったよねー。あたしも、まさか高校生で好きでもない顔の人と結婚決められるなんて嫌だからさー」
「それあんまり松隆くんの前で言わないであげてね……」
「アイツ、顔にコンプレックスあるから……」
……ふーちゃん。桐椰くんと月影くんはニヤッと笑ったけれど、私と鳥澤くんは笑いを堪えた。脳内で再現されてしまったあの光景といい、ふーちゃんの“本当に”という形容といい、場所が場所でなければ文字通り抱腹絶倒だったけれど、笑ってはいけない。
だが深古都さんの鉄仮面は今日も同じだ。「そうですか」と短く興味なさそうに答えただけだった。
「旦那様はなんと?」
「え? まあ若気の至りって誰にでもあるからねーって」
「いえ、婚約相手としての話ですが」
だめだ、字面に笑ってしまう。私達高校生だよ? 高校二年生だよ? これから大学受験しようかなってお年頃だよ? それなのに婚約って何。
「あれー? 深古都、お父さんから聞いてないの?」
「迎えを頼まれただけですので」
「この話はなくなったよー。松隆くんがお父さんの説得に成功したから。あ、そういう意味では残念な王子様とか言っちゃだめなのかなー」
「説得ですか」
「それ、俺らも詳しい話聞きたいんだけど、アイツ何話したの?」
桐椰くんの口がひきつっていて、笑いをこらえているのが分かる。みんな水をかけられた松隆くんを笑いものにしてるけれど、それでいいのか。仮にも親友なのに!
「んー、詳しくは聞いてないんだけど、やっぱり松隆くんのお父さんとしては松隆くんを落ち着かせたかったらしいから……。でも松隆くんのお父さんってあんまり許嫁とか好きじゃないらしくって、あたしが松隆くんのこと好みじゃないって分かったらわりとすんなりって」
「あの松隆が好みじゃないって言いきるのすごいな……」
それは最初から何度も聞いたので今更驚かない。ただ、桐椰くんが「うーん」と唸るとおり、単純にその理由だと今までのお見合いと違って進行していた理由が分からない。深古都さんも少し釈然としないようで、顎に手を当てて考え込んだ。
「……そうですか」
「いやー、よかったよねー。あたしも、まさか高校生で好きでもない顔の人と結婚決められるなんて嫌だからさー」
「それあんまり松隆くんの前で言わないであげてね……」
「アイツ、顔にコンプレックスあるから……」