その後、やって来たお見合いの舞台にて、月影くん以外は揃って硬直した。

 深古都さんに見せられて外観は知っていたけど、いざ高級ホテルを前にすると心臓が縮み上がった。コンコースにやって来るのはタクシーか外車、当然のように運転手付き。自動回転ドアは高級の代名詞というわけでもないはずなのに、そこのホテルにあるとそう見えた。おそるおそるホテル内に入れば、エントランスが広すぎて既に迷子になった気分だし、見上げると天井は吹き抜けだし、(きら)びやかな装飾が眩しい。呆然としている私達三人を差し置いて、月影くん一人が「何をしている。早く行くぞ」とさっさとエレベーター前に立っていた。すぐにエレベーターが来たので慌てて乗り込むと、よくあるように全面ガラス張りのエレベーターだ。高所恐怖症じゃないけど、高級感からの恐怖を感じる。


「つ、月影くん! 怖くないの!?」

「君は幽霊屋敷にでも来たつもりなのか?」

「こんな高級なところ来たことねぇ……」

「俺は一生来ない気がする……」


 でも桐椰くんが来たことないのは意外だな。確かに、お母さんが弁護士ってだけで (だけでというのはちょっと語弊(ごへい)があるけれど)、松隆くんみたいにパーティーに呼ばれて云々ってことにはならないのか。よかった、庶民仲間は多いに越したことはない。


「月影くんは慣れてるの? こういうところ」

「まさか。幼い頃に一度だけ似たようなところに泊まったことがある程度だ」

「じゃあなんでそんなに堂々としてるの!?」


 私達三人は、生まれたての小鹿とまではいわないけれど、エレベーターから出るときもやや怯えながら辺りを見回す始末だ。月影くんだけがレストランの場所にだけ迷って辺りを見回して「あっちだな」と早速爪先を向ける。