「で、なんだこれは」

「作戦会議ですよ、松隆くんのお見合いぶち壊そう大作戦!」


 月影くんの顔には、折角の休日に駅まで呼び出されるなんて迷惑極まりないと書いてある。でしょうね。今週は久しぶりに模試も何もない土曜日ですからね!

「総のお見合いって、いつ?」

「あと三時間半後くらい」


 時計を見て確認した。お見合いは二時四十分スタートだ。桐椰くんと月影くんはそれぞれスマホと腕時計でお見合いの時間を確認し「なんでこんなどたばたで作戦会議だよ」「会議の意味を理解できる頭ではないんだな」と早速文句たらたらだ。


「いいの! だって放課後は桐椰くんが生徒会の会議でいないし、なんなら松隆くんといちゃこらして一緒に帰っちゃうし!」

「いちゃこらは余計だろ、んなことしてねーよ!」

「三時間程度で縁談を潰す算段を整えるのは無茶だな、出直そう」

「縁談と算段……あ、ごめん! ツッキー待って!」


 冷ややかな目と共に立ち上がろうとした月影くんの服の裾を掴む。


「あ、ツッキー、ジーンズ似合うね! 背伸びたもんね! 足長いもんねー!」

「分かりやすい媚びは不愉快だ、帰る」

「やめて! 私こう見えて真面目だから! 真面目に松隆くんとふーちゃんのお見合いぶち壊そうとしてるから!」


 今度こそ立ち上がりコートを持ち、本気で帰ろうとした月影くんの腕を力強く掴んだ。兄の前にいる私を置き去りにしようとした時と同じだ。私の対面に座る桐椰くんはホットカフェラテを飲みながら呆れ顔だ。