微笑む顔に謝罪する。この王子様を誘惑か……。やはり私にはハードルが高いな……。
「まあ、女っぽくてあんまり好きじゃないんだけどね、この手」
「えー、でも指が綺麗な男の人好きって女の子は一定数いるじゃん。よくない?」
「桜坂は指が綺麗な人どうなの?」
「うーんあんまり拘りはな……。……いいと思うよ!」
「ほらね」
くそっ……! にやにやと楽しそうに私を虐めてくるこの王子様をどうやって誘惑しろっていうんですか、深古都さん! 松隆くん、最近開き直ってきてたちが悪いぞ……! 桐椰くんの横顔には「やめてやれよ……」と書いてある。
「話は変わるんだけど、聞いた? 三年の生徒が大怪我した話」
「なんだそれ、初めて聞いたけど」
「じゃあまだ大騒ぎってほどじゃないのか。俺も詳しいことは知らないんだけど、予備校帰りに他校生に襲われたんだって。ま、例によって花高の制服見てカツアゲでもされたんじゃないかと思うけど」
花高生だからお金持ちだと思われてカツアゲ……。懐かしいなあ、そういえば桐椰くんもそんな理由でカツアゲされてたことがあったなあ。あの時は華麗に返り討ちにしてたっけ。
「ふーん。でも変だな、あんま大怪我させられることってねーじゃん、うちの学校のやつ、すぐに財布出すし」
「そうなの?」
「下手に出し渋ったって余計に痛い目に遭うだけだからね。よっぽど腕に自信がない限り、ほどほどのタイミングで財布出すのが英断だと思うよ。生徒手帳とかとられると面倒くさいし」
「だから大怪我って聞くと、私怨じゃね、って思うんだよな」
ふーん、なるほど、そうなのか……。そういうこと考えて喧嘩したことなかったなあ。でもそうか、別にカツアゲなんてしないもんな、私。
「でも、怪我した三年──半田っていうらしいんだけど、半田先輩は見た目も中身も派手からは程遠いらしいんだよね。真面目ってほどじゃないけど、不真面目ってほどでもないし、ごく平凡。不良の恨みを買うような遊び方もしてないし、そういう場所に出入りもしてない」
「なんだそれ。なんで襲われんだよ、それが」
「だから妙だね、って話。しかも三年でこの時期、利き腕怪我したみたいで、公立の前期控えてるから大泣きしてたらしいよ」
「……それ、本当だとしたらマジで私怨だな」
「まあ、女っぽくてあんまり好きじゃないんだけどね、この手」
「えー、でも指が綺麗な男の人好きって女の子は一定数いるじゃん。よくない?」
「桜坂は指が綺麗な人どうなの?」
「うーんあんまり拘りはな……。……いいと思うよ!」
「ほらね」
くそっ……! にやにやと楽しそうに私を虐めてくるこの王子様をどうやって誘惑しろっていうんですか、深古都さん! 松隆くん、最近開き直ってきてたちが悪いぞ……! 桐椰くんの横顔には「やめてやれよ……」と書いてある。
「話は変わるんだけど、聞いた? 三年の生徒が大怪我した話」
「なんだそれ、初めて聞いたけど」
「じゃあまだ大騒ぎってほどじゃないのか。俺も詳しいことは知らないんだけど、予備校帰りに他校生に襲われたんだって。ま、例によって花高の制服見てカツアゲでもされたんじゃないかと思うけど」
花高生だからお金持ちだと思われてカツアゲ……。懐かしいなあ、そういえば桐椰くんもそんな理由でカツアゲされてたことがあったなあ。あの時は華麗に返り討ちにしてたっけ。
「ふーん。でも変だな、あんま大怪我させられることってねーじゃん、うちの学校のやつ、すぐに財布出すし」
「そうなの?」
「下手に出し渋ったって余計に痛い目に遭うだけだからね。よっぽど腕に自信がない限り、ほどほどのタイミングで財布出すのが英断だと思うよ。生徒手帳とかとられると面倒くさいし」
「だから大怪我って聞くと、私怨じゃね、って思うんだよな」
ふーん、なるほど、そうなのか……。そういうこと考えて喧嘩したことなかったなあ。でもそうか、別にカツアゲなんてしないもんな、私。
「でも、怪我した三年──半田っていうらしいんだけど、半田先輩は見た目も中身も派手からは程遠いらしいんだよね。真面目ってほどじゃないけど、不真面目ってほどでもないし、ごく平凡。不良の恨みを買うような遊び方もしてないし、そういう場所に出入りもしてない」
「なんだそれ。なんで襲われんだよ、それが」
「だから妙だね、って話。しかも三年でこの時期、利き腕怪我したみたいで、公立の前期控えてるから大泣きしてたらしいよ」
「……それ、本当だとしたらマジで私怨だな」