知ってはいたけど、改めて、だ。松隆くんは手が綺麗だ。指が長いし、爪はいつも短く切ってあるのに、縦に長くて綺麗な形をしている。多分女性の憧れの指だろう。私はどっちかいうと指が短めなので、松隆くんの手のほうがネイルも似合う気がする。つくづくなんなんだろうな、この王子様。
「ありがと。そういえば電池切れかけてる、ごめん」
「ああ、そろそろ充電しないとだったし、全然」
パカッと電子辞書の裏の蓋を開け、桐椰くんは電池を抜く。「今?」「多分忘れるから。電池上着に入れとけば帰った時に気づくだろ」「ああ、そういうね」と言いながら、松隆くんは窓枠に腰掛け、桐椰くんは窓枠に体を乗り出し、「昨日、兄貴から連絡あって。春休みの間に大阪来ないかっていうんだけど」とそのまま談笑し始める。
「いいじゃん、行けば」
「受験生だろ。お前も兄貴も何言ってんだ」
「大学見てきたら? 圏内でしょ、坂大も」
「だから、前期は関東で受けれるようにするし……後期には出すかもしれねぇけどさぁ、東京で私立行くのとどっちがどうかな」
「慶大って法学部に数学ないっけ?」
「ない。どうせ世界史は一ツ橋でいるからいいけど……個別対策嫌だなと思って」
「経済は? 数学で行けるよ」
「んー、法学部がいい」
二人が話す大学はどれも私の合格圏内にないので、ちょっと蚊帳の外だ。つまらなくて、今度は桐椰くんの手でも見るか、なんて視線を向けると、手を組んでるせいでちょっと見えにくい。
「ねー、桐椰くん、手見せて」
「なんだよ急に」
突然話の腰を折られた挙句、手を見せて、なんて謎過ぎるのは分かっている。でも受験の話なんてされても、私は暇だ。私の手の届かないレベルの話をされたって暇なんだ!
差し出された桐椰くんの手は、松隆くんと全然違う、ザ・男の人の手だ。指は長いけど、細くないし、寧ろちょっと太い。あとは手のひらが大きい。爪がぎりぎりまで短く切ってあるのが、料理をする桐椰くんらしい。暇潰しながらに対照的でいい、なんて気持ちから「ほーう」と声を出してしまった。
「なに?」
「んーん。松隆くんの手、綺麗だったから。桐椰くんとどう違うかなって」
「あぁ、手も言われるなぁ」
「顔も言われるもんな」
「中身は言われないのにね!」
「喧嘩売ってるの?」
「ありがと。そういえば電池切れかけてる、ごめん」
「ああ、そろそろ充電しないとだったし、全然」
パカッと電子辞書の裏の蓋を開け、桐椰くんは電池を抜く。「今?」「多分忘れるから。電池上着に入れとけば帰った時に気づくだろ」「ああ、そういうね」と言いながら、松隆くんは窓枠に腰掛け、桐椰くんは窓枠に体を乗り出し、「昨日、兄貴から連絡あって。春休みの間に大阪来ないかっていうんだけど」とそのまま談笑し始める。
「いいじゃん、行けば」
「受験生だろ。お前も兄貴も何言ってんだ」
「大学見てきたら? 圏内でしょ、坂大も」
「だから、前期は関東で受けれるようにするし……後期には出すかもしれねぇけどさぁ、東京で私立行くのとどっちがどうかな」
「慶大って法学部に数学ないっけ?」
「ない。どうせ世界史は一ツ橋でいるからいいけど……個別対策嫌だなと思って」
「経済は? 数学で行けるよ」
「んー、法学部がいい」
二人が話す大学はどれも私の合格圏内にないので、ちょっと蚊帳の外だ。つまらなくて、今度は桐椰くんの手でも見るか、なんて視線を向けると、手を組んでるせいでちょっと見えにくい。
「ねー、桐椰くん、手見せて」
「なんだよ急に」
突然話の腰を折られた挙句、手を見せて、なんて謎過ぎるのは分かっている。でも受験の話なんてされても、私は暇だ。私の手の届かないレベルの話をされたって暇なんだ!
差し出された桐椰くんの手は、松隆くんと全然違う、ザ・男の人の手だ。指は長いけど、細くないし、寧ろちょっと太い。あとは手のひらが大きい。爪がぎりぎりまで短く切ってあるのが、料理をする桐椰くんらしい。暇潰しながらに対照的でいい、なんて気持ちから「ほーう」と声を出してしまった。
「なに?」
「んーん。松隆くんの手、綺麗だったから。桐椰くんとどう違うかなって」
「あぁ、手も言われるなぁ」
「顔も言われるもんな」
「中身は言われないのにね!」
「喧嘩売ってるの?」