「……孝実と付き合ったこと、後悔してない。……好きだったから。幸せだったから。短い時間だっただけど」
私にできることは、今この場で私がしたことに対する懺悔だけだった。その言葉が今の孝実を傷つけたことだけは分かったから。……逆に、それしか分からなかったから。
孝実は何も言わない。私は視線を落とす。熱くて食べられなかった雑炊は、冷えて固まり始めていた。なけなしの食欲も、もうなくなった。
仕方なく、財布を取り出して、千円札を一枚置いた。驚いた顔をする孝実の前で、コートを着る。
「……私、寄り道して帰るから。先に帰ってて。一緒に帰りたくないでしょ」
「待って、亜季、話はまだ──」
「……私は、孝実のこと何も責めてないよ」
もし、孝実が私に許されたがってるなら、それは見当違いだ。私は孝実を責めてなんかないんだから。
それを言えないほど、私は子供じゃない。
「……ただ、どういう顔して会えばいいのか、分からなかっただけだよ。だって、私は、孝実の家族をめちゃくちゃにしたんだから」
顔を隠すように、鼻から首までマフラーを巻いた。逃げるように立ち去ろうとしたけれど、腕を掴まれて立ち止まるのは、きっと私が、孝実に何かを言ってほしいからだ。
「俺だって、亜季のこと責めてなんかない」
そうじゃない。そんなの、責めていいんだから、責めればいい。
「だから、俺に会いたくない理由がそれなら……その、俺が亜季を責めてるって思ってるから避けるんなら、それは、しないでほしい」
……それでも、ない。なぜだろう。孝実に疎まれていないと何度も聞かされて、なぜ、私は何も変わらないのだろう。
「……あのね、亜季」
手を軽く引っ張ると、少しだけその手から抜けそうになった。そのせいで、続きを聞くためには、手を引っ張ることができなかった。
「俺も、亜季と付き合ったこと、後悔だけはしてないから。……亜季の味方をしなかったこと、自分のことしか考えられなかったことを、後悔してる。……だから、罪滅ぼしなんて言われてもいいから、エゴなのかもしれないけど、俺はまた間違ってるのかもしれないけど……」
私にできることは、今この場で私がしたことに対する懺悔だけだった。その言葉が今の孝実を傷つけたことだけは分かったから。……逆に、それしか分からなかったから。
孝実は何も言わない。私は視線を落とす。熱くて食べられなかった雑炊は、冷えて固まり始めていた。なけなしの食欲も、もうなくなった。
仕方なく、財布を取り出して、千円札を一枚置いた。驚いた顔をする孝実の前で、コートを着る。
「……私、寄り道して帰るから。先に帰ってて。一緒に帰りたくないでしょ」
「待って、亜季、話はまだ──」
「……私は、孝実のこと何も責めてないよ」
もし、孝実が私に許されたがってるなら、それは見当違いだ。私は孝実を責めてなんかないんだから。
それを言えないほど、私は子供じゃない。
「……ただ、どういう顔して会えばいいのか、分からなかっただけだよ。だって、私は、孝実の家族をめちゃくちゃにしたんだから」
顔を隠すように、鼻から首までマフラーを巻いた。逃げるように立ち去ろうとしたけれど、腕を掴まれて立ち止まるのは、きっと私が、孝実に何かを言ってほしいからだ。
「俺だって、亜季のこと責めてなんかない」
そうじゃない。そんなの、責めていいんだから、責めればいい。
「だから、俺に会いたくない理由がそれなら……その、俺が亜季を責めてるって思ってるから避けるんなら、それは、しないでほしい」
……それでも、ない。なぜだろう。孝実に疎まれていないと何度も聞かされて、なぜ、私は何も変わらないのだろう。
「……あのね、亜季」
手を軽く引っ張ると、少しだけその手から抜けそうになった。そのせいで、続きを聞くためには、手を引っ張ることができなかった。
「俺も、亜季と付き合ったこと、後悔だけはしてないから。……亜季の味方をしなかったこと、自分のことしか考えられなかったことを、後悔してる。……だから、罪滅ぼしなんて言われてもいいから、エゴなのかもしれないけど、俺はまた間違ってるのかもしれないけど……」