しどろもどろと誤魔化そうとしても、誤魔化しきれない目撃証言が出てきてしまった。
「あの距離は絶対友達の距離じゃないよねー」
「……ふーちゃん」
「付き合わないの? 両想いじゃん?」
「……いやだからあの、私には鹿島くんという彼氏がですね……」
「そう、そこなんだよねー。聞こうと思ってたの」
深古都さんの誕生日だというキーホルダーを戻しながら、ふーちゃんは珍しく真顔になって私の目を見た。お陰で弾劾でもされたかのように心臓が締め付けられる。
「なんで鹿島くんと付き合ってるの?」
それでも、その問いに対する答えに惑うことなんてない。
「鹿島くんが好きだからだよ」
当然、声が上擦ることもなく、呼吸をするように嘘を吐いた。この嘘は今日だけで二度も吐く羽目になったけれど、きっとこれからも吐き続けなければいけない。それは確かに、辛いのかもしれない。
「……ふーん。さっきの亜季と桐椰くん見てたら、違うと思うんだけどなあ」
ふにふに、とふーちゃんはマンボウのぬいぐるみを手持無沙汰に弄ぶ。その目はマンボウに向けられているのに、虚空を見ていた。
「……あたし、月影くんにフラれてるんだよね」
「……え?」
唐突な告白に、詰問されているのが自分だということも忘れて素っ頓狂な声を上げた。ふーちゃんの目はどこか遠くを見つめたままだ。
「……ちゃんと告白したわけじゃないんだけど。でも、月影くんはあたしのこと、そういう風に見てくれないんだなーって分かった」
「……それは、その、さっき一緒にいる間に……?」
「んーん、もっと前。美春が転校したすぐ後くらいだよ」
ふーちゃんがそう思うのは、月影くんが雁屋さんを好きだとはっきり分かってしまったからだろうか。
「……聞いたでしょ、亜季も。美春が転校した後、月影くんが女の子と遊んでた話」
いや── “そういう風に見てくれない”という評価は、ただの片想いじゃ出てこない。
「……噂があったの。月影くんに“好きです”って言うのは、それは“遊ぼう”の意味だよって。多分、その噂、本当だった」
「あの距離は絶対友達の距離じゃないよねー」
「……ふーちゃん」
「付き合わないの? 両想いじゃん?」
「……いやだからあの、私には鹿島くんという彼氏がですね……」
「そう、そこなんだよねー。聞こうと思ってたの」
深古都さんの誕生日だというキーホルダーを戻しながら、ふーちゃんは珍しく真顔になって私の目を見た。お陰で弾劾でもされたかのように心臓が締め付けられる。
「なんで鹿島くんと付き合ってるの?」
それでも、その問いに対する答えに惑うことなんてない。
「鹿島くんが好きだからだよ」
当然、声が上擦ることもなく、呼吸をするように嘘を吐いた。この嘘は今日だけで二度も吐く羽目になったけれど、きっとこれからも吐き続けなければいけない。それは確かに、辛いのかもしれない。
「……ふーん。さっきの亜季と桐椰くん見てたら、違うと思うんだけどなあ」
ふにふに、とふーちゃんはマンボウのぬいぐるみを手持無沙汰に弄ぶ。その目はマンボウに向けられているのに、虚空を見ていた。
「……あたし、月影くんにフラれてるんだよね」
「……え?」
唐突な告白に、詰問されているのが自分だということも忘れて素っ頓狂な声を上げた。ふーちゃんの目はどこか遠くを見つめたままだ。
「……ちゃんと告白したわけじゃないんだけど。でも、月影くんはあたしのこと、そういう風に見てくれないんだなーって分かった」
「……それは、その、さっき一緒にいる間に……?」
「んーん、もっと前。美春が転校したすぐ後くらいだよ」
ふーちゃんがそう思うのは、月影くんが雁屋さんを好きだとはっきり分かってしまったからだろうか。
「……聞いたでしょ、亜季も。美春が転校した後、月影くんが女の子と遊んでた話」
いや── “そういう風に見てくれない”という評価は、ただの片想いじゃ出てこない。
「……噂があったの。月影くんに“好きです”って言うのは、それは“遊ぼう”の意味だよって。多分、その噂、本当だった」