しかも月影くんの歩くスピードは更に上がっている。お陰で私はほとんど小走りだ。そんなに私と一緒にいるの嫌かな!
「ねえ待ってよツッキー!」
「理由も事情もあるというのにそれを伝えもせずに都合よく他人を暇潰しに使おうなど、厚顔無恥と言わずにはいられんな」
「そこまで図々しいこと言ってるかな、私?」
「そういう面倒なことに付き合わせるために彼氏がいるんじゃないのか? そんなことで俺を呼びつけるな」
「それって一般的な彼氏? それとも明貴人くんのこと? どちらにしろツッキーの中での彼氏のポジション酷いね」
「君を甘やかすのは俺の役目ではないからな」
「そうだね……甘やかし担当はみんなのお母さんの桐椰くんだもんね……」
「遼なら生徒会室だが」
「知ってますぅー! だから今日は生徒会室に行ってないんですぅー!」
卒業式に向けてこれから会議が増えるという。そしてよりによって今日がその会議だという。昨日の放課後、鹿島くんに「明日来たらさすがに役員に睨まれるだろうな」なんて言われて理由を聞いたらそういうことだと。せめて今日までは暇潰ししたかったのに。
「それはご愁傷様だな」
「月影くんに言われると嫌味にしか聞こえない」
「兄でも帰ってくるのか」
……一発で正解を叩きつけられて、その場で崩れ落ちそうになった。その正解には突然薙刀を振り回されたといっても過言ではないくらい深い傷を負わされたし、痛みを感じる余裕がないくらいには即死レベルの致命傷だった。廊下の不自然な位置でビシッと硬直した私に、月影くんは呆れた顔で振り返る。
「なんだ図星か。しかもそんなことか」
「そんなことじゃないんですぅー! ていうか何で分かったの」
「家に帰りたくないということは家に普段いない誰かが来るということだからな。君に兄と妹がいることと、妹は確実に同居していることを知っている。親戚や知人が来ることも想定できるが、君は十一月に一度第六西に泊まっていた」
「えっ」
ちょっと待って、とストップをかけたくなった。なんで第六西に泊まってたことがバレてるんだ。表情だけで訊ねれば「遼がタオルの畳み方が違うとぼやいていた。丁度鳥澤の一件がある前だな」と思わぬ観点からの推理がきた。あの保護者を侮ってはいけない。
「ねえ待ってよツッキー!」
「理由も事情もあるというのにそれを伝えもせずに都合よく他人を暇潰しに使おうなど、厚顔無恥と言わずにはいられんな」
「そこまで図々しいこと言ってるかな、私?」
「そういう面倒なことに付き合わせるために彼氏がいるんじゃないのか? そんなことで俺を呼びつけるな」
「それって一般的な彼氏? それとも明貴人くんのこと? どちらにしろツッキーの中での彼氏のポジション酷いね」
「君を甘やかすのは俺の役目ではないからな」
「そうだね……甘やかし担当はみんなのお母さんの桐椰くんだもんね……」
「遼なら生徒会室だが」
「知ってますぅー! だから今日は生徒会室に行ってないんですぅー!」
卒業式に向けてこれから会議が増えるという。そしてよりによって今日がその会議だという。昨日の放課後、鹿島くんに「明日来たらさすがに役員に睨まれるだろうな」なんて言われて理由を聞いたらそういうことだと。せめて今日までは暇潰ししたかったのに。
「それはご愁傷様だな」
「月影くんに言われると嫌味にしか聞こえない」
「兄でも帰ってくるのか」
……一発で正解を叩きつけられて、その場で崩れ落ちそうになった。その正解には突然薙刀を振り回されたといっても過言ではないくらい深い傷を負わされたし、痛みを感じる余裕がないくらいには即死レベルの致命傷だった。廊下の不自然な位置でビシッと硬直した私に、月影くんは呆れた顔で振り返る。
「なんだ図星か。しかもそんなことか」
「そんなことじゃないんですぅー! ていうか何で分かったの」
「家に帰りたくないということは家に普段いない誰かが来るということだからな。君に兄と妹がいることと、妹は確実に同居していることを知っている。親戚や知人が来ることも想定できるが、君は十一月に一度第六西に泊まっていた」
「えっ」
ちょっと待って、とストップをかけたくなった。なんで第六西に泊まってたことがバレてるんだ。表情だけで訊ねれば「遼がタオルの畳み方が違うとぼやいていた。丁度鳥澤の一件がある前だな」と思わぬ観点からの推理がきた。あの保護者を侮ってはいけない。