ただ、さすがの庶民の鼻も、目の前でトリュフを削られるとその香りが分かった。運ばれてきたパスタの上で黒トリュフ削られ、花びらのように積もっていく。ほう、これがトリュフ……、と私は見つめてしまったけど、二人は慣れてるみたいで、私と違って感動したような顔はしなかった。
しかも、いざトリュフとパスタを食べようとしたけど、どう食べればいいのか分からない。上に載っているトリュフはポテトチップスみたいに薄っぺらくて、これだけ食べるのは変だ。かといって、パスタは芸術的にまかれ過ぎてどうフォークをつければいいのか分からない。トリュフさえなければ一口で食べれてしまいそうなパスタだけど、そんな大口を開けるのは品がないのだろうか。もうやだ。
「そういえば、亜季ちゃんは、お父さんとは家で話はするのかね」
が、突然そう切り込まれ、パスタの食べ方をどうしよう、なんて悠長なことは言ってられなくなった。松隆くんのお父さんに他意はないのかもしれないけれど。
「いえ……。元々、父が仕事で帰る時間には私が寝てしまっていることが多くて。朝が一緒になったら、時々話すことはあるんですけど」
「ああ、じゃああんまり学校で何があったとかいう話もしない?」
「しないですね……。それこそ朝が一緒になった時に聞かれることはあるんですけど……」
あの人は、私とお父さんが、親子の会話をするのを嫌がるから、あまり話すことはできない。でも今ここでそんなことを口にすることはできなかった。
「たまにしか聞かれないと、父も私の友達のことは分かりませんし、そうなると話もしにくくて」
「ああ、そうか、そうかもしれないね」
「松隆くんは、お父さんにそういう話はするんですか?」
「いやあ、遼くんと駿哉くんの話しかしないなあ。その二人しか友達がいないんだろう」
「もう少しいるよ」
「と本人は言うけど、亜季ちゃんから見ていてどうかね」
嘘ではないかもしれないけど、その二人レベルに仲良しな友達は他にいない。間違いない。
「……どうなんでしょう。松隆くんは七組で、私は四組なので、あまり普段の松隆くんを見る機会もなくて」
でもやっぱりそんなことはいえない。そうかあ、と松隆くんのお父さんは顎に手を当てる。
しかも、いざトリュフとパスタを食べようとしたけど、どう食べればいいのか分からない。上に載っているトリュフはポテトチップスみたいに薄っぺらくて、これだけ食べるのは変だ。かといって、パスタは芸術的にまかれ過ぎてどうフォークをつければいいのか分からない。トリュフさえなければ一口で食べれてしまいそうなパスタだけど、そんな大口を開けるのは品がないのだろうか。もうやだ。
「そういえば、亜季ちゃんは、お父さんとは家で話はするのかね」
が、突然そう切り込まれ、パスタの食べ方をどうしよう、なんて悠長なことは言ってられなくなった。松隆くんのお父さんに他意はないのかもしれないけれど。
「いえ……。元々、父が仕事で帰る時間には私が寝てしまっていることが多くて。朝が一緒になったら、時々話すことはあるんですけど」
「ああ、じゃああんまり学校で何があったとかいう話もしない?」
「しないですね……。それこそ朝が一緒になった時に聞かれることはあるんですけど……」
あの人は、私とお父さんが、親子の会話をするのを嫌がるから、あまり話すことはできない。でも今ここでそんなことを口にすることはできなかった。
「たまにしか聞かれないと、父も私の友達のことは分かりませんし、そうなると話もしにくくて」
「ああ、そうか、そうかもしれないね」
「松隆くんは、お父さんにそういう話はするんですか?」
「いやあ、遼くんと駿哉くんの話しかしないなあ。その二人しか友達がいないんだろう」
「もう少しいるよ」
「と本人は言うけど、亜季ちゃんから見ていてどうかね」
嘘ではないかもしれないけど、その二人レベルに仲良しな友達は他にいない。間違いない。
「……どうなんでしょう。松隆くんは七組で、私は四組なので、あまり普段の松隆くんを見る機会もなくて」
でもやっぱりそんなことはいえない。そうかあ、と松隆くんのお父さんは顎に手を当てる。