因みに、どれを使うべきか戸惑ったフォーク類はどれを使ってもよかったらしい。前菜を食べ終えると同時に一掃され、新たなフォークとナイフが並んだ。
「桜坂は──お父さんは、元気かね? たまに会うんだが、やはりプライベートで会うほどの時間は中々とれなくてね」
次のお料理を食べながら、そうですよね、と頷く。お父さんはともかく、松隆くんのお父さんにそんな暇があるとは思えない。
「……私自身、父とはあまり会うことがないので……松隆くんのお父さんと友達なんだという話も、父から聞いたのは最近でして……」
「桜坂とは、大学のサークルが一緒だったんだ。サッカーサークルでね、スポーツ推薦組には敵わないから部活には入らず楽しくやろうという、遊びのサークルだ」
そんな話も、お父さんからは聞かなかったな。本当に、お父さんは松隆くんのお父さんに関してはほとんど教えてくれなかった。
「そうなんですね……。サークル以外も同じだったんですか?」
「学部もゼミも同じだったよ。桜坂のほうが真面目に授業に出ていたからね、試験の前はいつも桜坂頼りだった。みんな桜坂のレジュメをあてにしてたよ。桜坂がいなかったら留年していたかもしれないな」
はは、と軽く笑ってしまうような昔話。その中に、お母さんもいるのだろうか? いるとして、この場で聞いていいのだろうか? 松隆くんが呼ばれたのは、どうしてなのだろうか? 松隆くんは、父親から私の両親のことを聞いてしまった後なのだろうか?
「桜坂のお父さんとそんなに仲良かったの? だったら教えてくれてもよくない?」
聞いてもいいものかどうなのか──なんて私の心中のもやもやをものともしない直球質問。私はフォークを落としそうになったけど、松隆くんは薄っすら笑みを佩いている。何なのこの親子、怖い。
「何を言ってるんだ。お父さんの友達の娘さんが転校してくるなんて、聞いたところで興味なんてないだろう、お前は」
「まあ、なかったけど」
「ほらみろ」
「でも、そういうの、お父さんはいつもするよね。桜坂のことはしなかったの、何で?」
ていうか松隆くんって“お父さん”呼びなんだね。“お父様”じゃなくて安心したし、“父さん”にもシフトしてないのってなんだか和むね。
そんな現実逃避をしたくなるくらい、松隆くんの笑みが怖かった。
「桜坂は──お父さんは、元気かね? たまに会うんだが、やはりプライベートで会うほどの時間は中々とれなくてね」
次のお料理を食べながら、そうですよね、と頷く。お父さんはともかく、松隆くんのお父さんにそんな暇があるとは思えない。
「……私自身、父とはあまり会うことがないので……松隆くんのお父さんと友達なんだという話も、父から聞いたのは最近でして……」
「桜坂とは、大学のサークルが一緒だったんだ。サッカーサークルでね、スポーツ推薦組には敵わないから部活には入らず楽しくやろうという、遊びのサークルだ」
そんな話も、お父さんからは聞かなかったな。本当に、お父さんは松隆くんのお父さんに関してはほとんど教えてくれなかった。
「そうなんですね……。サークル以外も同じだったんですか?」
「学部もゼミも同じだったよ。桜坂のほうが真面目に授業に出ていたからね、試験の前はいつも桜坂頼りだった。みんな桜坂のレジュメをあてにしてたよ。桜坂がいなかったら留年していたかもしれないな」
はは、と軽く笑ってしまうような昔話。その中に、お母さんもいるのだろうか? いるとして、この場で聞いていいのだろうか? 松隆くんが呼ばれたのは、どうしてなのだろうか? 松隆くんは、父親から私の両親のことを聞いてしまった後なのだろうか?
「桜坂のお父さんとそんなに仲良かったの? だったら教えてくれてもよくない?」
聞いてもいいものかどうなのか──なんて私の心中のもやもやをものともしない直球質問。私はフォークを落としそうになったけど、松隆くんは薄っすら笑みを佩いている。何なのこの親子、怖い。
「何を言ってるんだ。お父さんの友達の娘さんが転校してくるなんて、聞いたところで興味なんてないだろう、お前は」
「まあ、なかったけど」
「ほらみろ」
「でも、そういうの、お父さんはいつもするよね。桜坂のことはしなかったの、何で?」
ていうか松隆くんって“お父さん”呼びなんだね。“お父様”じゃなくて安心したし、“父さん”にもシフトしてないのってなんだか和むね。
そんな現実逃避をしたくなるくらい、松隆くんの笑みが怖かった。