「鹿島くんが好きだからじゃ、駄目なの?」
吐き気さえ催すその嘘を綺麗に吐くことができて安堵した。桐椰くんはどうせ騙されてくれないけれど、その嘘は一番楽で効果的な牽制だった。
「……本当にそうなら文句はねーよ」
「うん」
「副会長として鹿島を見てれば、アイツが意外とクソ野郎じゃないってのは分かる。俺達と敵対する生徒会のトップやってたってだけだ」
苦い気持ちが一瞬で胸の中に広がる。鹿島くんがあらゆる事件に安全な場所から関わっていたことを暴露したくなった。でもそんなことできるはずがなくて、そんな事実が余計に苦い気持ちを増幅させた。
その気持ちを抑えるために黙っていたせいか、桐椰くんも一度黙った。
ややあって、溜息交じりに「だから、」と続ける。
「お前が鹿島と付き合うのが気に食わないっていうのは、ただの俺の我儘だよ」
傍目の鹿島くんは、生徒会長の座にあるだけで、それ以上のことは何もない。御三家の敵の位置に形式的にあるだけだから、私が御三家のために鹿島くんと取引することなんて何もないはずだと、そういうことになる。
その外見に騙されてあげるとすれば、鹿島くんと付き合うのを責めるのはただの我儘だと。それはただの二度目の告白みたいなものだった。
そのせいで、相槌の打ち方すら分からず──やっぱり黙ってしまった。ただ分かるのは、桐椰くんがずぶずぶに私を甘やかしてくれているということだけだ。
「……だからすげー言い訳っぽいけど、やっぱり俺はお前が鹿島を好きだってのは嘘だと思ってる」
本当だよ、と畳みかけるほどの勇気が、その声を聞いて、出るはずがなかった。
「その嘘吐くのが辛くなったら、いつでも帰ってきていいから」
辛くなんかないよ、と笑い飛ばすほどのカラ元気が、その台詞を聞いて、出るはずがなかった。
「……だから……」
「……なんで?」
そのせいで、笑うのに失敗した。目が痛くなるくらい感情が溢れて止まらなくなりそうだった。
「なんでそこまで優しくしてくれるの」
鹿島くんと付き合うことを告げても、御三家の誰も、第六西の鍵を返すように言わなかった。その理由は、ただ私が御三家の敵に回ることはないだろうという三人の見通しだとばかり思っていたけど、桐椰くんの言葉を聞くだけで違うと分かる。
吐き気さえ催すその嘘を綺麗に吐くことができて安堵した。桐椰くんはどうせ騙されてくれないけれど、その嘘は一番楽で効果的な牽制だった。
「……本当にそうなら文句はねーよ」
「うん」
「副会長として鹿島を見てれば、アイツが意外とクソ野郎じゃないってのは分かる。俺達と敵対する生徒会のトップやってたってだけだ」
苦い気持ちが一瞬で胸の中に広がる。鹿島くんがあらゆる事件に安全な場所から関わっていたことを暴露したくなった。でもそんなことできるはずがなくて、そんな事実が余計に苦い気持ちを増幅させた。
その気持ちを抑えるために黙っていたせいか、桐椰くんも一度黙った。
ややあって、溜息交じりに「だから、」と続ける。
「お前が鹿島と付き合うのが気に食わないっていうのは、ただの俺の我儘だよ」
傍目の鹿島くんは、生徒会長の座にあるだけで、それ以上のことは何もない。御三家の敵の位置に形式的にあるだけだから、私が御三家のために鹿島くんと取引することなんて何もないはずだと、そういうことになる。
その外見に騙されてあげるとすれば、鹿島くんと付き合うのを責めるのはただの我儘だと。それはただの二度目の告白みたいなものだった。
そのせいで、相槌の打ち方すら分からず──やっぱり黙ってしまった。ただ分かるのは、桐椰くんがずぶずぶに私を甘やかしてくれているということだけだ。
「……だからすげー言い訳っぽいけど、やっぱり俺はお前が鹿島を好きだってのは嘘だと思ってる」
本当だよ、と畳みかけるほどの勇気が、その声を聞いて、出るはずがなかった。
「その嘘吐くのが辛くなったら、いつでも帰ってきていいから」
辛くなんかないよ、と笑い飛ばすほどのカラ元気が、その台詞を聞いて、出るはずがなかった。
「……だから……」
「……なんで?」
そのせいで、笑うのに失敗した。目が痛くなるくらい感情が溢れて止まらなくなりそうだった。
「なんでそこまで優しくしてくれるの」
鹿島くんと付き合うことを告げても、御三家の誰も、第六西の鍵を返すように言わなかった。その理由は、ただ私が御三家の敵に回ることはないだろうという三人の見通しだとばかり思っていたけど、桐椰くんの言葉を聞くだけで違うと分かる。