「うーん、あのねー、多分松隆くんから聞くことになると思うんだけどねー、お見合いがあったのは本当だよ」
――そこには必ず、思惑がある。
「……家の関係でか?」
「……分かんない。もともと、お父さんは松隆くんのお父様と知り合いではあったし。急といえば急だけど、松隆くんは元々お見合いさせられてたし、その流れでは不自然ではないんだよねぇ」
「……最近頻度は減っていたがな」
「月影くんはさぁ、分かってるんでしょ。松隆くんのお父様は自由恋愛主義だけど、松隆くんが去年遊んでるのを見かねてお見合い進めるようになったってこと」
そうだったのか……。確かに、五月頃の松隆くんは父親の呼び出しを受けていたけれど、夏を過ぎたころからはそんな話は聞かなくなった。松隆くんが――こういうのが適当かは別として――女性関係にだらしなかった時期はせいぜい去年の一月から三月。半年も経ったし、本人もそれっきりだらしがないこともないし、お見合いはさせなくてもいいだろう、なんてことになってたのかもしれない。
「……あぁ。総が、もうそういうことはしないと誓ったんだ。代わりに見合いはさせないでくれ、と頼んだんだと。ただ、その返事は保留にされていたらしい。……聞き入れてもらえたとしても、君が最後なのかもしれんな」
「あー。亜季のことがあったからそうしたのかなぁ」
ぎょっとした心臓が跳ねた。やっぱり聞いてないほうがよかったのかも。
「そうかもしれんな。まぁ、桜坂と付き合うかどうかではなく、そういった相手が将来現れたときに、見合いに縛られるのは嫌だと思ったんだろう」
「だーよねぇ。あたしも王子様と結婚するの嫌だし」
「総をフるのは君と桜坂くらいだな」
「んー、優良物件ではあるから、現実を見るならフらないよねー。確かにねー、あたしも、いつかきっと、好きじゃない人と結婚するのかもしれないなーとは思ってたんだけど」
「思っていたのか?」
「まーね、そのくらいの現実見る覚悟はあったよー。でも、いつかだったなぁ」
今だとは思ってなかったんだ、とぽつりと呟くのが聞こえた。つくづく、月影くんとはタイミングが合わないなぁ、と、そう言っているようにも聞こえた。
「……結局、つまり、総との見合いは進んでいると?」
――そこには必ず、思惑がある。
「……家の関係でか?」
「……分かんない。もともと、お父さんは松隆くんのお父様と知り合いではあったし。急といえば急だけど、松隆くんは元々お見合いさせられてたし、その流れでは不自然ではないんだよねぇ」
「……最近頻度は減っていたがな」
「月影くんはさぁ、分かってるんでしょ。松隆くんのお父様は自由恋愛主義だけど、松隆くんが去年遊んでるのを見かねてお見合い進めるようになったってこと」
そうだったのか……。確かに、五月頃の松隆くんは父親の呼び出しを受けていたけれど、夏を過ぎたころからはそんな話は聞かなくなった。松隆くんが――こういうのが適当かは別として――女性関係にだらしなかった時期はせいぜい去年の一月から三月。半年も経ったし、本人もそれっきりだらしがないこともないし、お見合いはさせなくてもいいだろう、なんてことになってたのかもしれない。
「……あぁ。総が、もうそういうことはしないと誓ったんだ。代わりに見合いはさせないでくれ、と頼んだんだと。ただ、その返事は保留にされていたらしい。……聞き入れてもらえたとしても、君が最後なのかもしれんな」
「あー。亜季のことがあったからそうしたのかなぁ」
ぎょっとした心臓が跳ねた。やっぱり聞いてないほうがよかったのかも。
「そうかもしれんな。まぁ、桜坂と付き合うかどうかではなく、そういった相手が将来現れたときに、見合いに縛られるのは嫌だと思ったんだろう」
「だーよねぇ。あたしも王子様と結婚するの嫌だし」
「総をフるのは君と桜坂くらいだな」
「んー、優良物件ではあるから、現実を見るならフらないよねー。確かにねー、あたしも、いつかきっと、好きじゃない人と結婚するのかもしれないなーとは思ってたんだけど」
「思っていたのか?」
「まーね、そのくらいの現実見る覚悟はあったよー。でも、いつかだったなぁ」
今だとは思ってなかったんだ、とぽつりと呟くのが聞こえた。つくづく、月影くんとはタイミングが合わないなぁ、と、そう言っているようにも聞こえた。
「……結局、つまり、総との見合いは進んでいると?」