「ギャル系と清楚系どっちがいい?」

「ギャル系」

「だから羽村! テメェが口出すんじゃねーよ!」

「白銀は清楚派なのか?」

「清楚つーか地味めがい──……。……とにかくその話はあとで」

「あ、俺もギャル系がいいからギャル系で固めて」

「お前氷洞がいるだろ!」


 そして雪が口を挟んだせいで白銀は今やパニック状態だ。思わず好みについて口を滑らせてしまった後に憤り交じりの激しいツッコミ、なんなら雪の胸倉を掴み上げるときた。日頃殴り合いの喧嘩なんて見ないのだろう不二が狼狽し、羽村が「あーぁ」なんて呆れ顔。


「だから京花とは付き合ってないって」


 それでも当事者の雪がどこ吹く風。


「つかお前絶対ギャル系嫌いだろ!」

「馬鹿な清楚は面倒くさい」

「聞いたか今の! お前みたいに性格悪いヤツ連れていくわけねーだろ! 花岡連れていくからな!」

「話終わった?」


 コイツらは一体どこまで馬鹿なんだ。そう言わせてもらいたいが、素直に手を離して座り直す白銀を見るとまだ我慢できる。朱雀は何か言いたげに私達を見比べていたけれど、パッと両手を挙げてみせる。


「ま、喧嘩に関してはマジで俺らお手上げだからな。合コンはいい感じに見繕うから、頼んだ」

「……任せとけ」


 肘をつき、その先の拳を額に当て、眉間に皺を寄せ、渋い顔で白銀は頷いた。合コンのことは最早脳内処理不可能だっただろう。その頭は苦悩で一杯のはずだ。あとはせいぜい「トップがこんなに面倒だとは思ってなかった……」という自分の浅はかさへの恨み言。


「青龍側もそれなりに人は割いてやるよ……早めに手打つべきだしな……」

「ありがたい。単純な戦闘力で言えば玄武もありなんだけどな、今年の玄武はどうもまとまりがないし、白銀と違って機転も利かなさそうだったから。助かった」


 そういえば、玄武はあれからどうなったんだろう……。謎の公開告白に来て以来、訪問はない。榊が入院する前にちょっと喧嘩してきた話は聞いたけど……。

 とりあえず、その日は美岳と白銀を中心に麒麟対策を講じ、南高近辺を青龍が警邏(けいら)することで話がついた。美岳は白銀と個人的に親しいのか、二人の話は忌憚なく、随分すんなりと話が進んだお陰で、夕食前には龍玄を出た。