「百代目が決めたんだろ? 百一代目のお前が変えてもいんじゃね?」

「それは……そうかもしれねーけど……ちゃんとした理由がないとだな……」

「“NO.2が氷の女王とできてるから”」

「んなクソみたいな理由でルール変えられるかよ! 独裁政治じゃねーんだぞ!」

「ま、実際白鴉と氷の女王も息苦しいんじゃねーの? 堂々といちゃつきたいとかねーの?」

「別に、雪とは何もないから。ルールが変わっても変わる関係も態度もない」


 茶番劇じみているとはいえ、話が長くなり過ぎた。冷ややかに返したけれど、美岳にどれほど伝わったのだろう。あまり伝わらなかったのは、肩を竦めるその表情で理解した。


「そうはいっても。お前らマジでずっと一緒にいんだろ? 何もないってことはないんじゃね?」


 なんなら、つい先ほどは私と雪の関係に触れるべきでないと判断したように見えたのに、いっそ開き直って尋問しようという魂胆が丸見えだ。


「大体、今日は朱雀側が青龍側に応援を頼むっていうから話し合いをすることにしただけでしょ。こんな無駄話してないで、少しは青龍側に差し出せる見返りのことでも考えたら?」

「絶対零度……」


 青ざめた不二が小さく呟いた。なぜか白銀まで冷や水を浴びせられたような顔になっている。羽村だって慌てて間に入った。


「まぁまぁまぁ! 俺が引き受けるって言っちゃったわけだし、そこはさぁ、俺自身の責任も考えるっていうか……」

「それは羽村の責任でしょ。青龍が力を貸す見返りの話は別」

「はいすいません」


 羽村はすごすごと引き下がる。美岳が「青龍ってマジで女に優しいな。いいところだ」なんて感心している。


「で、朱雀は青龍に何をくれるの」

「俺達があげるもの、ね……」


 考え込むのは不二ではなく美岳だ。被害に遭ったのが不二とはいえ、頼みごとをしているのは朱雀を代表した美岳、朱雀が青龍に借りを返すのが筋、という意見は一致しているようだ。


「あ、俺が仲良い女子に声かけてお前らとの合コンセッティングしてやるよ」

「乗った」

「おい羽村!!」


 そして再び羽村の失態。白銀は厳しい表情で怒鳴るも、その横顔にはやるせなさみたいなものが伺える。羽村の女好きは反省を知らない。