そして、淡々と地雷を踏んだ。四月からだけで何度目か、なんなら今日だけで何回目か、コーラのグラスに手を伸ばしていた白銀がそのままの状態で硬直し、死んだように話を受け身で聞いていた羽村も一瞬で我に返る。雪を除いて一斉にマズイ反応をした青龍陣営に、美岳を筆頭にした朱雀陣営が狼狽えた。


「え? 俺今何か変なこと言った?」

「……いや別に何も」


 白銀の声が震えているのが答えだ。だがそこはやはり女子力の高い美岳、おそらく察した。


「別に、麒麟のことがなくても京花とは一緒にいるし。京花は俺がちゃんと守るよ」


 が、雪による白銀虐めが始まった。敢えて空気を読まずに心の傷を抉っていく。そろそろ抉剔(えいてき)の雪と異名を授けてもよさそうだ。美岳の顔には「うっわコイツNO.2の分際でリーダーいじめてんのかよ」と書いてある。だが()の前で白銀が引き下がるわけにはいかない。


「……そうだな。氷洞と雪斗なら家も近いし」

「ゆりかごから墓場までならぬ起床から就寝まで面倒見れるからな」

「起床から就寝までってなんだ! お前氷洞の何だよ!」


 そこじゃない。ゆりかごから墓場までと並べるということは後々問題を生むことにツッコミを入れるべきだ。まんまと雪の言葉に乗せられている。


「別に、ただの幼馴染だっていつも言ってるだろ。男の嫉妬は見苦しいって彼方先輩に言われたのに……」

「嫉妬なんかしてねーよ! ただの幼馴染なのに朝から晩まで一緒とか節操ないだろって俺は言ってんだよ!」


 嘘つけ、なんてツッコミが空気だけでその場に広がった。お前の真意は知らないが少なくともそれではないだろう、と。


「まぁまぁ白銀、そう躍起になんなよ。別にいーじゃねーか、白鴉と氷の女王ができてても」

「できてたらマズイだろ! 青龍は内部恋愛禁止なんだよ!」


 見かねた美岳のフォローも虚しく、白銀はそれこそ躍起になってルールを持ち出すときた。