「だな。京花も来るだろ?」
「そうだね」
「お、やっぱ氷の女王と白鴉ができてるって噂、マジなんだな」
あたかも以心伝心のような遣り取りになってしまったせいか、満面の笑みの美岳に冷やかされた。白銀の顔に「やっぱり俺だけ仲間はずれ」と書いてあるけどフォローするのは面倒なので無視だ。
「で、朱雀側は誰を連れて来るの。今そこに並んでる幹部?」
「あぁ、片渕は行く。あとは不二──襲われたヤツも連れていくから、まぁいい人数だろ」
呼ばれて反応したのは、眉から口まで濃い顔立ちで体格もいい、美岳とは真逆の男だった。正直、臙脂で少し高級感のある制服が似合っていない。
「不二ってやつは?」
「ん、そこにいるヤツ」
「あ、こんにちは……」
立ち並ぶ男たちの影からそろそろと出てきたのは、片渕と真逆の小柄な子だった。身長は私と同じくらいかもしれない。が、眉は薄いし目はくりくりの二重だし、肌は白いしきめ細かいし、声は甲高いしで……しかもスカートをはいているときた。どうやら被害者は女子らしい、白銀の横顔が真剣さを帯びる。
「どうだ、可愛いだろ。次代の有力候補だ」
が、朱雀は代々女装の上手い男と決まっているので、どうやら男らしい。
「なんで朱雀って毎年絶対可愛い男が入学してんだ?」
「朱雀の存在知って選んでるヤツがいるからじゃねーの」
なるほど、と頷きながら白銀は羽村の襟首を掴んで起き上がらせる。立ち直ることができずに顔を覆っている羽村を引き摺りながら「どこ行く? 龍玄でいいか?」と、そうと決まれば早い行動だ。因みに龍玄というのは私達行きつけの古い喫茶店だ。当然美岳も「よし、んじゃ片渕と不二以外は解散しとけよ」と了承。
かくして青龍と朱雀の共同戦線が張られることになり、会議を開くべく、連れ立って龍玄を訪れる。