「どうだ、氷の女王。過度なボディタッチは逆効果、控えめにちょっと触りながら、相手が年上系と年下系どっちが好みか見極め、年下系相手には自分のか弱さをアピールしつつ相手だけを頼りにしてるって雰囲気を出せば落とせる。女の武器を思い知ったか!」

「お前は男だろ」


 そうだとしてもあまりにも心得過ぎてておそろしい。というか、相手の好みまで把握するなんて一体どんな無駄特技だ。恋愛対象は女って言ってたのに。

 羽村はといえば、そんな策略を耳にして漸く我に返り、「うわあああぁぁ」と悲鳴のような叫び声を上げながら頭を抱え込んだ。美岳は颯爽とスカートを翻しながら自陣に戻る。


「何でだ……あれは男なのに……俺は女が好きなのに……!」

「元気出せよ羽村、あれは正直ドキッとした」


 鵜飼先輩がぎゅっと胸のあたりを掴みながら羽村の肩を叩く。他にも美岳から目を離せないヤツが視界の隅だけでも数人確認できたので、確かに陥落された組多数のようだ。それでも羽村を勇気づけるには足りず、羽村はがっしりと鵜飼先輩の両肩を掴んだ。


「うーちゃん先輩、帰りナンパしに行きましょ……! 俺はちゃんと女が好きなんです!」

「績くん、私だけじゃだめなの?」

「やめろおおおぉぉ」


 すかさず追い打ちをかけに戻る美岳も、本当に用心棒を頼みたいというよりは面白がっているだけのように見えた。白銀はこっそりと雪に耳打ちする。


「羽村って女好きですげーメンクイなのにな。それを落とすってすげーよな」

「ま、女好きですげーメンクイだけど同じくらいすげー馬鹿だからな」

「というわけで青龍、本題だ。茶でもしばきながら話そうぜ」


 羽村を散々弄んだ後、くいっと美岳は男らしく親指を外に向けてみせた。因みに羽村はショックで頭を抱えて地面に横たわっている。暫くは再起不能だろう。白銀と雪は美岳に向き直っているので、揃って無視を決め込んだのが分かった。


「誰連れてく?」

「雪斗と……まぁ羽村は連れていくか、責任は取ってもらう」


 羽村が美岳に陥落されたせいで厄介事を引き受ける羽目になったからだ。とはいえ、幹部の発言にすら二言はないと責任をとる白銀は偉い。