「手短に詳しく聞いていいっすか?」

「いや、詳しく話すほどは知らねーんだ。男か女か確かめてやるって服脱がされた、ってくらい。朱雀と幹部がたまたま通りかかったから強姦されずに済んだ、って感じだから、結構深刻だったらしいけど」

「それ、朱雀内部の問題ですか?」

「外のヤツらの仕業だから、今話したんだろ」


 白銀の疑問に、鵜飼先輩の代わりに答えたのは雪。その点に関しては私も同意見だ。朱雀が来るのは、決まって何かを披露したいとき──衣替えをしたとか、夏だから浴衣を着たとか、水着になったとか。ただただ美しさを競おうとする(誰と競ってるのかは知らない)朱雀が、こんな中途半端な時期に来るなんて……。


「最悪、犯人が青龍内にいるんじゃねーの」

「やめろ、西崎」


 羽村が諫めるのも尤もだ、いようがいまいが、犯人の存在を疑っていたこととなれば、チーム内の空気はすごぶる悪くなる。それが幹部発信となれば、猶更。


「どちらにしろ、その件は関係あるだろうなってことか……」


 犯人が青龍内にいるわけじゃないなら、一体何を──全員でそう訝しんでいたけれど、朱雀と相対した瞬間、その答えを渡された。


「犯人を捜してほしい」

「俺達に……か……?」


 美岳は堂々と、なぜか偉そうにさえ見える態度で言ってのけたのだ。お陰で白銀は外面も半分忘れてぽかんと間抜け面。でも美岳は気にしない。左右には護衛よろしく男五人と(あるいは女装した男)一人を侍らせ、詰め物の胸を支えるように腕を組み、渋い顔をしている。


「もちろん、俺達も探してはいる。が、いかんせん俺達はお前らと違って武闘派じゃない」

「武闘派じゃない不良って何派だよそれ」

「しいていうなら舞踊(ぶよう)派か?」

「なるほど上手い……」

「上手くないしっかりしろ」


 真面目な顔で惚けたことを言う美岳に真面目な顔で頷く白銀、一体何の茶番だ。真横の雪は「うーん」と顎に手を当てて考え込む素振りをみせている。