隣に並んで同じ帰り道を辿りながら暫く、白銀は不意に呟いた。
「秀、酷い怪我してたな」
榊は、白銀と同じクラスだ。幹部でこそないもののクールで面倒見がいいので人気を博している。その榊が学校帰りに襲われ、通りかかった人の通報で病院に運ばれたのが昨日の夜の話だった。ゴールデンウィーク明け初日の夜にそんな事件が起こり、ゆるっとした連休気分は一気に消し飛んだ。なんなら、榊からの連絡で青龍には緊張が走った。
『知らない顔だったけど、制服は深緑にオリーブ。相手は麒麟だ』
崇津市の東西南北高校は、四神の名を冠したチーム同士で伝統的に勢力争いを繰り広げている。十数年前、そこへ突然飛び込んできたのが“麒麟”だ。
私立中央高校。深緑を基調にオリーブを差し色にした、少し上品な制服。だがその中身は制服を裏切るように薄汚く、やることなすこと品がない。
四神のルールはいくつかあるけれど、その中でやはり圧倒的頂点に君臨する、掟ともいうべきものは「喧嘩と暴力を間違えない」ということだ。きっと次ぐルールは「勢力争いは四神同士に限定し、決して無関係な人に手を出さない」だろう。それはさておき、「喧嘩と暴力を間違えない」というのは、あくまで勢力争いを掲げた喧嘩だけが許され、理不尽な暴力とか、相手を痛めつけるようなことは許されないということ。
ちょっと腹の立った相手を殴ることさえ許さない。暴力に恐喝、強姦なんてもってのほかだ。不良チームのくせに、妙にそんなところに線を引く四神は、結局部活みたいなものだという認識に落ち着く。だいぶ攻撃的な活動内容ではあるけれど。
それを正面から破壊するように破っているのが、麒麟だ。一般人だろうが四神の不良だろうがお構いなし、好き勝手に遊ぶ。自称“悪ふざけ”のそれは、とてつもなくたちが悪い。
──東西南北高がやってることと何が違うんだよ? そう言われたら、私達は何も言い返すことはできない。結局、東西南北と中央の間には、あるのかないのかも不明瞭な微妙なラインしかない。
「秀、酷い怪我してたな」
榊は、白銀と同じクラスだ。幹部でこそないもののクールで面倒見がいいので人気を博している。その榊が学校帰りに襲われ、通りかかった人の通報で病院に運ばれたのが昨日の夜の話だった。ゴールデンウィーク明け初日の夜にそんな事件が起こり、ゆるっとした連休気分は一気に消し飛んだ。なんなら、榊からの連絡で青龍には緊張が走った。
『知らない顔だったけど、制服は深緑にオリーブ。相手は麒麟だ』
崇津市の東西南北高校は、四神の名を冠したチーム同士で伝統的に勢力争いを繰り広げている。十数年前、そこへ突然飛び込んできたのが“麒麟”だ。
私立中央高校。深緑を基調にオリーブを差し色にした、少し上品な制服。だがその中身は制服を裏切るように薄汚く、やることなすこと品がない。
四神のルールはいくつかあるけれど、その中でやはり圧倒的頂点に君臨する、掟ともいうべきものは「喧嘩と暴力を間違えない」ということだ。きっと次ぐルールは「勢力争いは四神同士に限定し、決して無関係な人に手を出さない」だろう。それはさておき、「喧嘩と暴力を間違えない」というのは、あくまで勢力争いを掲げた喧嘩だけが許され、理不尽な暴力とか、相手を痛めつけるようなことは許されないということ。
ちょっと腹の立った相手を殴ることさえ許さない。暴力に恐喝、強姦なんてもってのほかだ。不良チームのくせに、妙にそんなところに線を引く四神は、結局部活みたいなものだという認識に落ち着く。だいぶ攻撃的な活動内容ではあるけれど。
それを正面から破壊するように破っているのが、麒麟だ。一般人だろうが四神の不良だろうがお構いなし、好き勝手に遊ぶ。自称“悪ふざけ”のそれは、とてつもなくたちが悪い。
──東西南北高がやってることと何が違うんだよ? そう言われたら、私達は何も言い返すことはできない。結局、東西南北と中央の間には、あるのかないのかも不明瞭な微妙なラインしかない。