今回も今回とて、第七十二代を名乗る朱雀のトップは美人だ。間違いなく男なのだが、その鬘いくらしたんだと聞きたくなるクリーム色のウェービーロングの髪は天然顔負けだし、その顔の輪郭は女にしか見えないし、パーツだって綺麗だし、堂々とスカートをはくくらいには美脚だ。彼自身女装美人だとは自負しているらしく、絶対何か詰め物してるだろとしか思えない胸の下で腕を組んで不敵に笑う。


「んなこと言ってマジで美人だって思ったろ? スカート捲ってやろうか?」

「見たくねぇよ気持ち悪ィ」

「はぁー? この俺様の女装気持ち悪いとか目腐ってんだろ。噂の氷の女王より俺のほうが美人だしな!」


 私に白羽の矢が立ち、ザッと敵味方全員の目が一斉に私を見た。元々白銀の隣に立っていたせいで敵の視線も痛かったが、今までは「あれが例の氷の女王」との目だったのに「確かに美岳(みたけ)さんのほうが美人だ!」の目に変わった。朱雀の第七十二代目は美岳というらしい。

 私が目を細めたのをどう感じたのか、白銀の舌打ちが隣から聞こえる。


「何言ってんだ。お前がどんだけ美人だろうが男と女だぞ。比べるまでもねぇ」

「……リーダー」

「どんだけお前が美人だろうがお前の手頭から淹れられた紅茶が美味いわけねーだろ」

「ねぇリーダー」

「お前のスカート捲るメリットなんて捲っても殺されねぇくらいしかねーよ」

「おい白銀!」


 露ほどもフォローになっていないフォローを繰り返す白銀の胸座をついに掴んでしまった。ウゲッと白銀の顔がひきつるがお構いなしにその胸座を引き寄せる。


「男と女を性別で比べるってどういう意味か分かる? ん? 生物学上男だってことを除けば私はアイツに負けてるって言ってるんだけど?」

「あっ……そうですよねすみません言葉足らずで……」

「足りないとか足りてるとかそういう話じゃないんだよ」

「……誤解を招く表現をしてしまい」

「何をニュースの誤報風に謝ってるのお前には故意があるだろ故意が」

「はっ、百代目といい百一代目といい、代々青龍のトップは女に頭上がんねぇ間抜け野郎だな!」

「代々女装美人をトップに担ぎ上げる朱雀にだけは言われたくねぇ」

「適切なツッコミだ、その調子だよ白銀」