「みんな結構莉乃ちゃんに厳しいんだなぁ」

「あの子は顔は可愛いけど話がつまんない」

「おいやめろ西崎」


 ただ、西崎は人を選ぶ。最初から全力で友達を選り分けていくタイプで、八方美人とは程遠い。だから西崎に好意を向ける人と嫌悪を向ける人との割合は半分ずつ。しかも西崎自身が他人に対する好き嫌いを隠さないタイプなので、西崎と西崎の仲の悪い人とが同じ空間にいるときの空気は非常に悪い。白銀と西崎の仲が悪かったら青龍の空気は一変しているだろう。


「んで、幹部の役目はそんな感じだけど、新学期を迎えて玄武も代替わりしたし、朱雀もこの間変わったばっかりだから、まだお互い探り探りになると思う。やりすぎないように気を付けてくれ。白虎は去年に引き続き栄がやってる」

「あ、玄武といえば氷洞さんに公開告白したってマジすか?」

「マジだな」


 花岡の質問に対し白銀は食い気味に返した。雪が玄武もしくは白銀のことを鼻で笑う。他の新幹部も、西崎を除いて一斉にニヤついた。


「いやー、あれはマジで笑った。何がウケるってこの氷洞相手に告白とか、どんだけ女慣れしてないんだって話」

「でもって氷洞ちゃん、ノータイムで断ったんだって?」

「そうそう、青龍にいるからって一言でバッサリっすよ。だったら引退したら付き合うのかっていうなー!」

「別に、いい理由だったからそう答えただけだし。引退してまた告白されたら別の理由考えるよ」

「ま、そーっすよね」


 雪、鵜飼先輩、羽村が順に茶化すので、いつも通りに淡々と返せば、花岡が最後に大きく頷く。


「氷洞先輩には雪斗先輩いますし、身の程知らずにもほどがあるって感じで!」


 そして、誰もが口にするそのネタのせいで、室内の空気は凍り付いた。