そんな心の声は、きっと雪に伝わっている。

 雪の視線が私の肩に滑る。目の前に抱えたセーラー服では隠し切れない肩の ──。


「なぁ京花」

「……雪」


 耐えきれず に、その手にある眼鏡を取って、眼前に差し出した。


「眼鏡、かけといて」


 雪の視線が私の目に戻って来た。何か言いたそうに、じっと私を見つめる。

 でも何も言わなかった。代わりにその手は眼鏡を受け取る。

 だからそれを見届けてから背を向けた。


「……玄関で待ってて」

「……あぁ」


 背後の雪は静かに立ち上がる。カチャリと眼鏡をかけなおす音もした。


「……ごめん、京花」


 小さな謝罪の声は、セーラー服を被って遮った。